研究課題/領域番号 |
21K20789
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
田中 智大 東北大学, 医学系研究科, 学術研究員 (60906634)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | TROP2 / モノクローナル抗体 / がん / 乳がん / 抗腫瘍 / フローサイトメトリー / ウェスタンブロット / 免疫組織化学染色 |
研究実績の概要 |
がん細胞においてtrophoblast cell surface antigen 2(TROP2)の過剰発現が確認されており、がんの進行および予後不良との相関が報告されている。TROP2は乳がんや肺がんなど様々な悪性度の高いがん種で発現が亢進している膜タンパク質であり、近年、TROP2を標的とした抗体医薬品の開発が加速している。我々は、Cell-Based Immunization and Screening (CBIS)法を用いて独自の抗TROP2抗体、TrMab-6を開発した。TrMab-6はフローサイトメトリーやウェスタンブロット、免疫組織染色といった様々なアプリケーションに使用可能である。さらにTrMab-6は、乳がん細胞株および悪性度の高いトリプルネガティブ乳がん細胞株に対し、in vitroでの抗体依存性細胞障害(ADCC)活性、補体依存性細胞障害(CDC)活性を有し、それぞれのin vivoマウス乳がんゼノグラフトモデルに対し抗腫瘍効果を発揮することがわかった。本成果を2報の国際誌に投稿し、いずれも掲載された。また、複数の学会での報告を行った。今後、引き続きCasMab法を用いて、正常細胞のTROP2には反応せず、がん細胞型TROP2に特異的に反応する新規抗TROP2抗体の樹立を試みる。また、新規抗TROP2抗体の詳細なエピトープ解析により、TROP2のがん型糖鎖構造の解明を行う。さらに、in vitroとin vivoの両方において新規抗TROP2抗体による抗腫瘍効果を検討し、その作用メカニズムを解明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに独自の抗TROP2モノクローナル抗体、TrMab-6を開発した。TrMab-6はフローサイトメトリーやウェスタンブロット、免疫組織染色といった様々なアプリケーションに使用可能である。さらに解析の結果、TrMab-6は乳がん細胞株および悪性度の高いトリプルネガティブ乳がん細胞株に対し、in vitroでの抗体依存性細胞障害(ADCC)活性、補体依存性細胞障害(CDC)活性を有することがわかった。また、それぞれのin vivoマウス乳がんゼノグラフトモデルにおいて、コントロール群に比べ腫瘍体積、腫瘍重量の減少が認められ、抗腫瘍効果を発揮することがわかった。本結果を2報の国際誌に投稿し、いずれも掲載された。また、複数の学会での報告を行った。これらの成果により本研究がおおむね順調に進捗していると判断した。TrMab-6に引き続き、がん特異的抗TROP2抗体の取得を目指し、乳がんや膵臓がん、肺がんなどの細胞株にTROP2を強制発現させた細胞をマウスに免疫し、多数の候補抗体が得られている。それらの特性解析と、さらなる追加の免疫計画も予定している。
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今後の研究の推進方策 |
乳がんや膵臓がん、肺がんなど、様々ながん細胞株に発現させたTROP2および正常細胞株由来TROP2を用い、がん細胞のTROP2にのみ反応する抗体をフローサイトメトリーによりスクリーニングする。次に、欠損変異および点変異導入TROP2を作製し、抗体との結合を評価することでがん特異的抗体の抗原認識部位を同定する。糖転移酵素遺伝子の発現量の異なるTROP2発現細胞株を用いて、抗体の反応性と糖転移酵素遺伝子発現量の比較を行い、がん特異的糖鎖に関与する糖転移酵素遺伝子を特定する。この情報をもとにがん細胞型TROP2の糖鎖構造の推定を試みる。マウス担がんモデルを用いて、本研究で樹立したがん特異的抗TROP2抗体の抗腫瘍効果を検討する。また、がん特異的抗TROP2抗体の抗体遺伝子クローニングを行い、ADCC活性を上昇させるため、コアフコース除去した各種ヒトキメラ型抗体やヒト化抗体を作製する。同様に、抗腫瘍効果について検討し、臨床応用を目指す。
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