研究課題/領域番号 |
21K20797
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
室田 吉貴 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (40909602)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 合成ポリマー / がん微小環境 / ハイコンテント・スクリーニング / グリオーマ |
研究実績の概要 |
合成ポリマーを用いた腫瘍微小環境の構成的解明を目指して、初年度は、がん微小環境を擬態するバイオ機能性ポリマーのスクリーニング系を確立することを第一目標に研究を実施し、以下の進捗をみた。 (1) 100%ガラス製マルチウェルプレートにアクリル基を付与し、その上で調製した各種アクリル系モノマー混合液をUVクロスリンカーにより重合した。モノマー混合液の組成により様々な物性を有するポリマーが合成されるため、各種アクリル系モノマーの組み合わせ、反応容量、UV照射による重合条件、残存モノマー洗浄条件などの検討を行い、計69種類のポリマーを各ウェルに固相した「ポリマースクリーニングプレート」を作製した。 (2) フルオレセインで標識したアクリルモノマーを用いた実験により、同プレートのガラス底面においてポリマーが固相化されていることを確認した。 (3) 蛍光標識した成体マウスアストロサイト由来グリオーマ細胞株とその起源細胞を同数混合して、ポリマースクリーニングプレート上に播種し培養した。イメージサイトメーター搭載の蛍光顕微鏡(BioRevo, BZ-X800)を用いて、培養開始後24時間と96時間の蛍光強度をもとに細胞の増殖率を算出したところ、異なるポリマー上において細胞は接着や増殖などの観点から様々な挙動を呈することが明らかとなった。さらに、24時間後に多くの細胞が接着していたにもかかわらず96時間後には細胞接着が見られない細胞死の誘導を示唆するポリマーも見られた。 一連の取り組みにより、組成を変化させることで細胞に対して様々な機能を有するポリマーが合成可能であり、イメージサイトメーター搭載の蛍光顕微鏡を用いることでハイスループットにそれらのスクリーニングが可能となった。難治性がん微小環境を合成ポリマーにより模倣し、解析するという新たな研究手法を確立させた重要な進捗であると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
合成ポリマーのスクリーニング系を確立することが出来たため、おおむね順調であると言える。一方、当初予定していた、免疫応答性担がんマウスモデルにおける末梢血循環免疫細胞、および腫瘍浸潤免疫細胞の解析結果に関しては未だに結論が得られていない状況にあるため、次年度も解析を続ける。
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今後の研究の推進方策 |
各種アクリル系モノマーの組み合わせ、反応容量、UV照射による重合条件、残存モノマー洗浄条件などの検討を行い、ポリマーライブラリの拡張を図る。腫瘍進展に伴い変遷する抗腫瘍性免疫細胞を特定し、それらの増殖や活性に影響を与えるポリマーのスクリーニングを実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
大規模なポリマーライブラリーの構築と迅速で簡便なスクリーニング系の確立に当初予定していた以上の時間を要し、腫瘍随伴免疫細胞の同定に至らなかったため、回収キットや特殊培地・サイトカインなどを購入しておらず、未使用額が生じた。次年度に購入する。
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