悪性グリオーマの進展に伴い変遷する免疫細胞の種類を明らかにするため、本年度は、p53-/-マウス大脳由来アストロサイト(AS)に変異型RasV12遺伝子を導入した人工グリオーマ細胞(AS-RasV12)を同系野生型マウス大脳線条体に移植したマウスグリオーマモデル(室田らの発表、日本癌学会2017)の末梢血を解析した。AS細胞あるいはAS-RasV12細胞を移植後6、12、18日目における末梢血を眼窩静脈叢から採取し溶血後、各種細胞表面マーカー抗体とフローサイトメトリーを用いて血中免疫細胞のプロファイリングを行い、以下の結果を得た。 (1)リンパ球系細胞を解析したところ、CD4陽性T細胞、B220陽性B細胞の割合は移植した細胞間、および経時的な比較において一定であったが、CD8陽性T細胞の割合は移植後18日目の担がんマウス(AS-RasV12細胞移植マウス)末梢血において増える傾向が見られた(p=0.086)。 (2)ミエロイド系細胞を解析したところ、腫瘍を形成しないマウスと比較して、移植後18日目における担がんマウスの末梢血中ではCD45HighCD11bLowの単球系細胞の割合が有意に減少する一方、骨髄由来のミクログリア前駆細胞として知られるCD45NegaCD11bHigh細胞の割合が有意に上昇していることが明らかとなった。 今後は本年度新規にグリオーマ関連免疫細胞として同定したこれら細胞分画のグリオーマ進展への寄与を共移植や共培養実験により明らかにする。同細胞分画の腫瘍進展への寄与が明らかとなった場合には、前年度に立ち上げた機能性ポリマーのスクリーニング系により、同細胞の活性や生存、増殖に影響する微小環境を人為的に構築し、細胞への作用機序を解明することで脳腫瘍微小環境の新たな特性の提示、治療標的の同定を行う。
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