研究課題/領域番号 |
21K20800
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
砂川 真輝 名古屋大学, 医学系研究科, 特任助教 (50892709)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 腫瘍微小環境 / 弱酸性環境 / 腫瘍間質液 / 抗がん剤耐性 / 膵癌 |
研究実績の概要 |
研究者は弱酸性間質液に依存する抗がん剤耐性変動メカニズムの探索および弱酸性間質液に着目する新規治療法の開発を目標とした。まずは、生体における弱酸性間質液を模倣するためにin vitroで使用可能なpH緩衝剤を除く細胞培養液を作成し、弱酸性培養溶液を作成した。同弱酸性培養液は約1週間にわたりpH値が保たれており安定した実験系を保証することを確認した。続いて、様々なpH値の細胞培養液で培養することで癌細胞の抗がん剤耐性マーカーの発現強度が変更するかを検討した。その結果、pHが酸性に傾くにつれて抗がん剤耐性マーカーの発現が強くなることを明らかにした。以上の結果からpH依存的に抗がん剤耐性が獲得されることが示唆されたため、実際にいくつかの抗がん剤を様々なpHの培養液中に添加し細胞生存能およびアポトーシス能の変化を確認した。その結果、弱酸性培養液中では抗がん剤添加後には癌細胞の生存能が増加しアポトーシスが抑制されていることを確認した。以上のことからin vitroにおいて癌細胞はpH依存性に抗がん剤耐性能を獲得していた。 さらに生体 (in vivo)において間質液の酸性化の緩和が癌細胞の増殖を抑制するかを検討した。マウス由来の膵臓癌細胞を用いた同種皮下腫瘍移植モデルを用いて抗がん剤にpHの酸性化緩和製剤を上乗せし、抗がん剤の感受性変化を評価した。その結果、酸性化緩和製剤を併用した場合には抗がん剤の感受性が向上していることを明らかにした。また免疫不全マウスを用いて、ヒト膵癌細胞株をマウスの腹腔内に投与する腹膜播種モデルでも同様の結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
膵臓癌自然発がんモデルマウスの作成が遅れており、マウス自然発がんマウスモデル由来の初代培養細胞株の樹立が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
1.膵臓癌自然発がんモデルマウスから膵臓癌細胞を樹立し、同細胞の三次元培養を行ったのちに培養液のpHを変化させ、抗がん剤に対する抵抗性の変化を検討する。 2.弱アルカリ性に調節した乳酸添加細胞培養液と乳酸添加弱酸性細胞培養液で、それぞれにおいていくつかの膵臓癌細胞を培養し、細胞内の網羅的遺伝子発現解析のために次世代シーケンサーを利用したトランスクリプトーム解析を行う。同定した抗がん剤耐性関連遺伝子の候補遺伝子の発現を確認した後に発現を認めた遺伝子をノックダウンあるいは過剰発現をさせ、増殖アッセイ、TUNELアッセイ、アポトーシスアッセイを用いて同定し得た遺伝子の意義を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
膵臓癌自然発がんマウスモデルの作成が遅れており、初代培養の細胞調製に時間がかかっている。したがって、初代培養の細胞調製に必要な試薬の購入していない。したがって、膵臓癌自然発がんマウスを作成し、マウスモデル由来の膵癌細胞の初代培養が樹立する際に、次年度利用分の費用を用いて細胞調整試薬を購入し研究を促進させる。
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