研究実績の概要 |
最難治がんの膵がんは根治切除後の再発率が高く、術後再発予防のための新規治療法の開発が急務である。術後にミクロレベルで残存する腫瘍細胞を排除するには、長期にわたり全身性の抗腫瘍効果が期待できるがん免疫療法が有望である。腫瘍に自然免疫賦活剤を直接注入するin situワクチン療法(ISV: In Situ Vaccine)は腫瘍自身をワクチン抗原のソースとして利用し、局所療法で副作用を抑えつつ全身性の抗腫瘍免疫を誘導できるという利点を有する。本研究は、膵がんモデルマウスで摘出前の腫瘍に新規TLR9リガンドK3-SPGの術前ISVを施行し、術後の再発抑制効果について明らかにする。 申請者が所属する京都大学消化器内科研究室で所有する遺伝子改変膵がんモデルマウス(KPC:LSL-KrasG12D/+, Trp53R172H/+, Pdx1-Cre)から樹立した膵がん細胞株をナイーブマウスの皮下に同種移植し、生着した腫瘍をDay10 に摘出し(本モデルでは約200mm3 に相当)、これを膵がん術後モデルマウスとして用いる。 術前K3-SPG-ISV群とControl群の膵がん術後モデルマウスを比較し、再発腫瘍の増殖の有無と生存期間を解析した。両群とも大半は再発なく生存し、生存期間に有意差を認めなかった。再発せず長期生存した膵がん術後モデルマウスの皮下に同じ膵がん細胞株を再移植すると、Control群では腫瘍が生着し増大したのに対し、術前ISV群では腫瘍が生着せず免疫記憶が成立していることが推察された。
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