研究課題/領域番号 |
21K20804
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
真島 宏聡 広島大学, 病院(医), 医科診療医 (90907057)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 循環主要細胞 / 樹状細胞ワクチン / 3次元培養 |
研究実績の概要 |
肝細胞癌の末梢血中に存在する循環腫瘍細胞(circulating tumor cell:CTC)から樹立したオルガノイドをがん抗原として応用した樹状細胞ワクチンの開発に取り組んでいる。肝細胞癌の約8割に発現しているとされるGlypican-3(GPC3)は肝細胞癌をはじめとした複数の癌腫において新規の腫瘍マーカーやがん免疫療法の標的タンパクとして期待されている。GPC3を標的とした肝細胞癌患者の末梢血中CTCの検出は研究者のグループにおいて十分に確立された手法であり、本研究においてもCTCの検出に関しては多くの症例を集積することが出来ているが、CTC由来オルガノイドの樹立にはまだ至っていない。その原因としては、本研究における手法で得られる末梢血中CTCの頻度は数個/8ml程度と少数であることが考えられる。分離した培養・増殖させ安定してオルガノイドの樹立を行うには、安定した培養に足る量の細胞数が得られるよう多量の血液採取もしくはアフェレーシスを行うか、少数の細胞でも安定して培養可能な方法の樹立が必要である。また、CTCの分離方法についても再検討が必要であると考えている。GPC3を標的抗原とした抗体と磁気ビーズを用いて、フローサイトメトリーによるpositive selectionによりCTCの分離を可能としているが、この方法では結合した抗体・ビーズにより分離した細胞のバイアビリティやフェノタイプに影響を及ぼす可能性があり、分離後の培養・増殖に悪影響を与えている可能性が懸念される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現状、分離したCTCの培養・増殖方法の樹立には至っていないため、それらを早急に確立することが急務である。マウスモデルでの樹状細胞ワクチンについては十分な経験があるため、まずはマウスでCTC由来オルガノイドモデルを樹立することができれば、研究計画が大幅に前進することが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
末梢血CTCからオルガノイドを樹立する方法としてマトリゲルを用いた3次元培養を応用した手法を検討しているが、実際のヒトの臨床検体の使用は限られているため、安定性に懸念があり、また再現性を確認することが困難である。そこで、今後はまずはマウスモデルでの検証が必要と考えている。マウス肝がん細胞株Hepa1-6を用いてマウスCTCモデルを構築し、CTC由来オルガノイドを安定して樹立可能な培養条件の探索を行うことも並行して実施することを計画している。具体的には、Hepa1-6に緑色蛍光タンパク質(GFP)を遺伝子導入した細胞株を作成し、それを用いてマウス肝腫瘍モデルを作成。GFPにより抗体や磁気ビーズに依存しない細胞ソーティングが可能となるため、細胞に与える影響を最小限に抑えることが可能になる。また培養した細胞の観察も容易に行うことが可能となることが期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
期待した研究結果が得られなかったため、学会発表や論文作成に要する見込みであった費用を使用することができなかった。そのため、次年度使用額は新規で必要な実験計画などに活用する見込みである。
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