骨軟部腫瘍の多くは、分化傾向に基づく診断分類が行われるが、病理診断困難例が多く予後不良である。申請者は、軟部肉腫の病態を細胞分化におけるエピゲノム制御の破綻ととらえ研究し、一部の肉腫においてヒストンH3遺伝子の変異を認め、診断マーカーとなることを報告した。近年、RNA修飾によりRNAの安定化、翻訳制御が起きることで遺伝子発現の制御が起こるエピトランスクリプトーム制御が明らかとなり、一部癌腫における悪性形質との関連が報告されている。本研究は、軟部肉腫の病態をエピトランスクリプトーム制御機構の破綻に起因した細胞分化異常という観点から解明し、創薬標的の探索を目指す。 2021年度は、軟部平滑筋肉腫を中心に解析を進めた。 まず、エピトランスクリプトーム制御因子の遺伝子異常を公開NGSデータを用いて探索したところ脱メチル化酵素の遺伝子増幅を見出し、増幅例における遺伝子発現量増加を見出した。 次に摘出外科材料を用い、免疫染色を用い複数のメチル化・脱メチル化酵素の発現量評価を行った。 その結果、複数分子の免疫染色高発現と細胞増殖能との相関性を見出したが、明らかな予後との関係性はなかった。 そこで、当科が樹立した軟部平滑筋肉腫を用い、siRNAによる当該分子のKnock downを行った後にRNA-seqで遺伝子発現変動を探索した。(学会発表予定) 現在は機能解析を進めている。また、本研究の症例集積過程でPEComaの細胞診標本採取に成功し、遺伝子解析結果と合わせて論文発表を行った。
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