骨軟部腫瘍の多くは、分化傾向に基づく診断分類が行われるが、病理診断困難例が多く予後不良である。申請者は、軟部肉腫の病態を細胞分化におけるエピゲノム制御の破綻ととらえ研究し、一部の肉腫においてヒストンH3遺伝子の変異を認め、診断マーカーとなることを報告した。近年、RNA修飾によりRNAの安定化、翻訳制御が起きることで遺伝子発現の制御が起こるエピトランスクリプトーム制御が明らかとなり、一部癌腫における悪性形質との関連が報告されている。本研究は、軟部肉腫の病態をエピトランスクリプトーム制御機構の破綻に起因した細胞分化異常という観点から解明し、創薬標的の探索を目指す。 2022年度も引き続き、軟部平滑筋肉腫とを中心に解析を進めた。 臨床検体を用いた免疫染色では、RNAメチル化酵素高発現症例で、核分裂が多く増殖活性が高かった。また、免疫チェックポイント分子高発現例が一部のメチル化酵素高発現例で見出された。細胞株実験では、各メチル化酵素のKD後にRNA-seqを行った。すると、炎症関連遺伝子、増殖活性に関連する遺伝子群の発現低下が見られた。これららの結果は、組織解析で認められた一部メチル化酵素の高発現例で起こるPD-L1発現および増殖活性上昇の制御機構を説明できる可能性が高いことが示唆された。 上記内容を学会発表した。 また研究過程で集積したMyxoid liposarcomaについて核異型が形態学的に高度であると予後不良因子となることを見出した。さらに、核異型度が高い腫瘍においては細胞周期関連遺伝子が有意に発現していることを明らかにし、論文発表を行った。
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