研究課題
本研究はこのunmet medical needsを補完すべく、化学療法耐性後尿路上皮癌(UC)の細胞内代謝リプログラミング機構の駆動メカニズムを初めて明らかにした研究内容である。難治性UCの標準化学療法は代謝拮抗薬Gemcitabine(GEM)と白金製剤Cisplatin(CDDP)(GC)療法であるが耐性獲得後の予後は不良である。本研究の過程で一部耐性UC細胞は嫌気解糖系に依存したエネルギー代謝機構を形成している可能性が考えられた。上記作業仮説を検証すべく、本学常設のメタボロミクスコア(CE-MS)を用いて、野生/CDDP/GEM耐性株の3細胞における水溶性代謝産物の網羅的定量解析を行った結果、以下の知見を得た。耐性株は、1)解糖系(ピルビン酸/乳酸)代謝産物の産生量が有意に高いこと、2)ペントースリン酸回路(Pentose Phosphate Pathway :PPP)の主経路であるピリミジン代謝経路に関連する代謝産物量が高いこと、3) 13C-5で標識したα-ケトグルタル酸とクエン酸の産生量が有意に高く、クエン酸回路(TCA cycle)が一部「逆行性」に駆動していること(reductive TCA cycle)を確認した。これら一連の代謝リプログラミング機構は、GEMに競合作用を持つデオキシシチジン三リン酸(dCTP)の産生と、CDDPを無毒化する還元物質NADPHの産生により、巧みに耐性機構を構築していることがわかった。本研究ではさらに一連の代謝リプログラミング機構が、メタボリックチェックポイント分子:イソクエン酸デヒドロゲナーゼ2(IDH2)が制御していることを発見した。GEM/CDDPとIDH2阻害薬の併用はGEM/CDDPの感受性回復に大きく寄与することを確認し、既存抗癌剤の治療効果を大きく向上させることを確認した。
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EMBO Journal
巻: 42 ページ: 1-27
10.15252/embj.2022110620.