ヒトパピローマウイルス感染に起因する中咽頭癌(HPV中咽頭癌)では抗EGFR薬が使用されるが、抗EGFR薬効果の乏しい症例も多く副作用も強いことから、同薬のHPV中咽頭癌への治療効果予測因子と独自の治療選択法の確立が求められる。しかし、HPV中咽頭癌の研究の歴史は比較的浅く、臨床応用可能な検証がなされていない現状がある。申請者はこれまでに、HPV中咽頭癌特有の病理像を認め、これに関連しEGFR発現が低いこと、またその機序としてウイルスゲノムの関与の可能性を見出し報告してきた。しかしながら、依然として詳細な機序の解明は不十分であるため、本研究ではHPV感染株化細胞を用いたパスウエイ解析を行い、ウイルスゲノムとEGFR下流経路動態の関連を明らかにすることを目的としている。これらに伴い、HPV中咽頭癌特有のEGFRパスウエイ異常を明らかにすることで独自の治療法の重要なデータを提供し、新たなる治療戦略の道を切り開くことが可能となる。 HPV中咽頭癌においてEGFR経路の各因子の動態を解析し、また、その他の癌関連パスウエイ動態を網羅的に解析した。EGFR経路因子の動態に強い関連を示す、① ウイルスゲノムとEGFR蛋白発現量との関係性 ②リン酸化抗体を用いたPI3K-Akt経路因子の免疫染色による評価を行った。I.培養細胞を用いたEGF下流パスウェイ の活性化状態評価として ①HPVウイルス感染特異的なシグナル伝達系の同定 ②網羅的遺伝子発現解析を施行した。II.ヒト組織での活性化シグナル経路の検証と 株化細胞での治療標的の探索として ③活性化シグナル経路の検証 ④各種阻害剤による抗腫瘍効果の判定を行うことを計画した。
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