研究課題/領域番号 |
21K20814
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
岡東 篤 帝京大学, 医学部, 助教 (90756719)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2025-03-31
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キーワード | 膀胱癌 / FGFR3遺伝子変異 / 遺伝子改変モデルマウス / FGFR阻害薬 / 免疫チェックポイント阻害薬 / 腫瘍免疫環境 |
研究実績の概要 |
転移性膀胱癌に対する新規治療薬としてPD-1/PD-L1を標的とした免疫チェックポイント阻害剤が登場したが、奏功率は20%程度であり、特にFGFR3変異を有する膀胱癌に対しては反応性が乏しいことがわかっている。その原因としてFGFR3変異陽性膀胱癌は腫瘍浸潤性免疫細胞が少ないため、免疫療法の効果が乏しいと推測されているが、腫瘍浸潤免疫細胞が少ない原因については未解明のままであった。本研究ではFGFR3遺伝子改変モデルマウスを用いて、FGFR3が腫瘍免疫環境にもたらす影響を検証し、FGFR阻害薬が免疫環境を変化させ、免疫チェックポイント阻害薬の感受性を高める可能性について検討することを目的とした。FGFR3変異膀胱癌のうち頻度の高いS249C変異をコードするcDNAをknock-inさせたマウスを作製し、タモキシフェン誘導型CreERシステムを用いて、尿路上皮特異的にFGFR3遺伝子変異を誘導した。マウス膀胱に発生した腫瘍を用いて、組織学的検査やRNA解析、細胞株(UPFL cells)の樹立を行った。また膀胱癌の分化マーカーの解析やorganoidを用いた解析によりFGFR3はluminal subtypeへの分化へ関与していることが示唆された。膀胱癌のluminal subtypeは免疫チェックポイント阻害薬への反応性が乏しいという事実を踏まえると、この結果はFGFR3変異陽性膀胱癌が免疫チェックポイント阻害薬の効果が乏しい根拠となり得ると考えられた。樹立した細胞株を用いてFGFR阻害薬の効果を検証した。細胞株の実験では、FGFR阻害薬がUPFL cellsの細胞増殖を抑止することが確認された。UPFL cellsを同種移植させたマウスにFGFR阻害薬と免疫チェックポイント阻害薬を投与し、併用療法において有意に腫瘍抑制効果を発揮することを発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間を延長したが、本課題の成果を論文として発表した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究によって、膀胱癌におけるFGFR3変異がluminal subtypeへの誘導する可能性が示唆された。引き続き、FGFR遺伝子異常がもたらす構造的変化についてorganoidなどを用いた3D培養系を確立し、検証していく。また新たな疑問として、制御性T細胞(T-reg)に発現するFGFR1遺伝子の役割を解明することを目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究機関の異動により、新たに研究器具等をセットアップするために使用する予定である。
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