研究課題/領域番号 |
21K20819
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
野村 祥子 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 特別研究員 (40911178)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 細菌 / がん治療 / デザイナー細菌 |
研究実績の概要 |
生きた細菌に薬効をもつタンパク質産生機構を搭載したデザイナー細菌を、がん治療に用いる研究が進められている。中でも、治療に適した使用細菌種候補の拡大や最適化は、重要な検討課題である。本研究は、乳酸菌や酪酸菌といった有機酸分泌細菌をターゲットに、がん治療に有用な細菌種候補を開拓し、それらを基盤としたがん治療用デザイナー細菌の開発を目的とする。具体的には、①腫瘍内増殖能を有する有機酸分泌細菌をスクリーニングにより選別し、②それらの生体内投与時の特性(体内動態や免疫賦活作用、抗腫瘍効果など)を評価する。さらに③候補細菌に遺伝子改変を施し、新規のがん治療用デザイナー細菌の開発を図る。 研究を開始してすぐ、腫瘍内で生着・増殖した細菌を、腫瘍由来の細胞片やタンパク質などの不純物の影響を受けることなく分離する手法が必要であることが分かった。そこで2021年度は、まず、腫瘍から細菌を高純度で回収する手法の確立に注力し、フィルタ分離や遠心分離、MACS等様々検討した。これにより、腫瘍内で増殖した細菌の細菌数やタンパク産生などを、対象細菌選択的に評価することが可能となった。本手法は、今後様々な細菌種を評価するにあたって必須と考えられる。 また、細菌に腫瘍内で効率よく抗がん作用を発揮させるためには、腫瘍内に集積し増殖した細菌が、通常培養下と比べてどのような代謝系等の変化を起こしているのかをタンパクレベルで網羅的に解析する事が必要であると考えられた。そこで、上記で確立した手法で回収した腫瘍内生着大腸菌に対してタンパク質抽出・泳動解析を実施し、プロテオーム解析の準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績に記載の通り、今後の課題推進において必須である、腫瘍からの細菌の分離という手法を確立できた。また、腫瘍内細菌の代謝系変化の情報は、有用細菌種を選択する上で重要な判断基準となる。このように、当初の予定とは異なっているが、課題推進のために必要な手法・情報を確立・収集出来ていることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、実際に有機酸分泌細菌の選別に取り組む。乳酸菌、酪酸菌カクテルを担癌マウスに投与し、腫瘍内増殖能を有する細菌種をスクリーニングする。その際、2021年度に得られた大腸菌の代謝系変化の情報に基づき、腫瘍内での増殖能やタンパク産生能が高いと予想される細菌種を優先的に選別する。さらに、それらの体内動態や抗腫瘍効果、抗がん作用などを評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究実績の概要に記載の取り、腫瘍内の細菌を評価する前に、その分離方法を詳細に検討する必要があったため、研究の進み方が当初の予定と異なってしまった。それにより、次年度使用額が生じた。 翌年度は、当初の使用計画に加え、本来今年度実施予定であった担癌マウスへの細菌カクテル投与実験やスクリーニング等によって本助成金を使用したい。
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