研究課題/領域番号 |
21K20827
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐々木 謙 東京大学, 医学部附属病院, 特任臨床医 (10907702)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 骨髄線維症 / 治療標的 |
研究実績の概要 |
CAMK2Gノックアウトマウスは心臓や筋肉の研究で用いられ、論文報告されているが造血器腫瘍においてはその意義は明らかになっていない。そこで、CAMK2Gノックアウトマウスを用いて、骨髄線維症におけるCAMK2Gの意義と治療標的としての可能性について検証を行った。In vivoでの検証では、マウス骨髄のc-kit陽性細胞にGFPで標識されたMPL変異体を過剰発現させた細胞を放射線照射したマウスに移植する骨髄線維症マウスモデルを用いる。野生型とCAMK2Gノックアウトマウスを用いて比較することによりCAMK2Gノックアウトによる生存延長がみられることが明らかになった。さらに詳細を調べるとまた脾腫の改善や白血球数の低下がみられ、骨髄線維症の症状の改善がみられた。 CAMK2Gのノックアウトにより骨髄線維症が改善することが示唆されたため、骨髄線維症におけるCAMK2Gの役割について検証を進めた。骨髄線維症を発症後の野生型マウス由来の細胞とCAMK2Gノックアウトマウス由来の造血細胞を採取し、RNAseqを提出した。 骨髄線維症とCAMK2Gの関連に関する報告は他の研究室からはされておらず、研究は進められていない。CAMK2Gノックアウトマウスを用いた解析は骨髄線維症をCAMK2Gという新しい遺伝子を通して明らかにするこれまで行われてきた研究とは全く異なる視点からの研究となる。骨髄線維症の治療には経口JAK2阻害剤が臨床において使用されている。症状改善効果を示すが、腫瘍細胞を排除はできないため治療効果限定的で予後不良である。また、長期投与による耐性化があり完治は見込めないことや、骨髄抑制などの副作用も問題となる。現在さまざまな方法で治療標的の同定、解析が行われているが、新規治療薬の開発は進んでおらず、本研究は新規治療薬開発において意義のある研究であるとかんがえられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CAMK2Gノックアウトマウスを用いて、骨髄線維症におけるCAMK2Gの意義と治療標的としての可能性について検証を行った。In vivoでの検証では、マウス骨髄のc-kit陽性細胞にGFPで標識されたMPL変異体を過剰発現させた細胞を放射線照射したマウスに移植する骨髄線維症マウスモデルを用いる。野生型とCAMK2Gノックアウトマウスを用いて比較することによりCAMK2Gノックアウトによる生存延長がみられることが明らかになった。さらに詳細を調べるとまた脾腫の改善や白血球数の低下がみられ、骨髄線維症の症状の改善がみられた。このようにCAMK2Gのノックアウトにより骨髄線維症が改善することをin vivoで検証することができた。 次に骨髄線維症におけるCAMK2Gの役割について検証を進めた。骨髄線維症を発症後の野生型マウス由来の細胞とCAMK2Gノックアウトマウス由来の造血細胞を採取し、RNAseqを提出した。今後網羅的遺伝子発現の結果解析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
マウス骨髄のc-kit陽性細胞にGFPで標識されたMPL変異体を過剰発現させた細胞を放射線照射したマウスに移植する骨髄線維症マウスモデルにおいて野生型とCAMK2Gノックアウトマウスの骨髄細胞における遺伝子発現解析を行う。これら2種類の細胞において発現量に差のみられた遺伝子を絞り込み、in vitroでの実験を行い、骨髄線維症におけるCAMK2G関連の下流のエフェクターを同定する。具体的には32D細胞にMPL変異体を過剰発現させた細胞に対し、shRNAで各候補遺伝子をノックダウンし、細胞増殖の変化、関連シグナル経路の変化を確認する。本実験により、骨髄線維症の発症メカニズムの解明と新規治療標的の探索が可能となる。
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