研究実績の概要 |
悪性神経内分泌腫瘍の定義ははっきりとなされていないが多発転移を伴う神経内分泌腫瘍、またはG2G3の神経内分泌腫瘍おおよび神経内分泌癌が該当すると考えられる。今回は、前者に注目して当院で2005年から2020年に手術加療された肝転移を伴う神経内分泌腫瘍患者を後向きに検討した。臨床的に再発転移の頻度が高率であり、その治療方針決定に難渋するNET G2/3患者を対象とした。47例のNETG2, 13例のNETG3患者が対象となった。これら60例の患者群において全生存率に関して解析を行うと、R0切除のみが唯一の独立した予後延長因子であった。そこでR0切除を施行された31例に限定して無再発生存期間に関する解析を行なったところ肝転移個数が8個以上の群で有意に無再発生存期間の短縮を認めた。8個以上の群では術前に検出された転移腫瘍個数よりも実際の病理標本での腫瘍個数が多い傾向が強く、画像で検出されない小病変が存在する可能性が示唆された。臨床因子以外の予後因子を検索すべく、凍結標本を保存されていたものについて、その原発ならびに転移組織よりRNA抽出を行い、解析に提出した。当科より膵癌の予後に関与すると報告しているEg5について解析を行なった。Eg5はモータータンパクであるKinesinの仲間で細胞分裂時の紡錘体形成に必須であるとされる。Eg5発現に関してRNA解析を用いて高発現群と低発現群に分類するとEg5高発現群は低発現群と比較して有意に予後不良であった。Eg5は泌尿器がんではその阻害剤が治療に有効な可能性が基礎研究レベルではあるが示されており、今後神経内分泌腫瘍にとおいても予後因子のみならず治療の標的因子としても有用となる可能性が示唆された。
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