研究課題
神経芽腫は脳腫瘍を除いた小児期発症の固形腫瘍のなかで最も頻度が高い。更に高リスク神経芽腫の5年無増悪生存率は30-40%と予後不良で小児がんによる死亡原因第2位である。一方で神経芽腫には自然退縮(4S)する症例も見られ、その複雑な病態の為に以前から診断治療に難渋している。これまでに尿中代謝物の網羅解析により神経芽腫の増殖に貢献度の高い尿中代謝物を確認し、中でも悪性度に関与すると考えられる3-Methoxytyramine sulfate(MTS)に着目した。本研究課題の核心をなす学術的「問い」は神経芽腫の悪性化に関与する代謝系を見出すことであり、MTSが神経芽腫の悪性化に関与する特異的な代謝系に関与するか?を検証することである。本研究では複雑な病態を呈する神経芽腫テストデータで、MTSで高リスク神経芽腫(治療抵抗性、再発・死亡群)を識別できるか、更にMTSが高リスク神経芽腫の特異的な代謝経路に関与するかを検証する。①詳細な臨床情報を有する尿検体の回収(神経芽腫患児および健常者)、②診療情報を生かしたMTSに基づく神経芽腫検査モデル構築と妥当性の検証、③MTSの定量メソッド構築と質量分析計による検証、④MTSによる神経芽腫検査の性能評価、⑤MTSを中心とした代謝経路などの代謝リプログラミング解析の計5項目を検討予定である。本研究期間中に、神経芽腫患児尿で3-MTSを定量し、高リスク神経芽腫(治療抵抗性、再発・死亡群)でMTSの上昇を確認した。
2: おおむね順調に進展している
神経芽腫の臨床サンプルを収集し、3-MTSを測定した。当初の予定のテストデータ用の神経芽腫尿を確保し、LC/MS: 液体クロマトグラフィー質量分析法でMTSの定量を行い、高リスク神経芽腫(治療抵抗性、再発・死亡群)でMTSの上昇を確認した。CE/MS:キャピラリー電気泳動質量分析法では、定量・定性ともにMTSは検出されなかった。LC/MS: 液体クロマトグラフィー質量分析法によるMTSの定量メソッド(正常値の決定など)を検証し、MTSによる神経芽腫検査の性能評価を行っている。現在、3-MTSを中心とした代謝経路などの代謝リプログラミング解析も検討中である。
①臨床情報を有する尿検体の回収(神経芽腫患児および健常者)、②診療情報を生かしたMTSに基づく神経芽腫検査モデル構築と妥当性の検証、③MTSの定量メソッド構築と質量分析計による検証、④MTSによる神経芽腫検査の性能評価、⑤MTSを中心とした代謝経路などの代謝リプログラミング解析の計5項目を中心に研究を行う。引き続き神経芽腫の悪性度を尿中代謝物で評価するために、引き続き3-MTSの定量を行い、神経芽腫のリスク分類に使用できるか検証する必要があると考えている。本研究では今後もLC/MS: 液体クロマトグラフィー質量分析法を中心にMTSを測定するが、MTSの関連代謝物に関してもCE/MS:キャピラリー電気泳動質量分析法で検討する。
コロナの影響で、協力機関との研究がスムーズに進まず次年度繰越額が生じた。またオンライン会議が中心となり、交通費など次年度使用額が生じた。R4年度は、サンプル外注を中心に研究を加速する。
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Pediatric Surgery International
巻: 37 ページ: 1659~1665
10.1007/s00383-021-04987-y