研究課題/領域番号 |
21K20834
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
奥知 左智 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (30910517)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 神経膠腫 / 遺伝子 / MRI / PET / IDH |
研究実績の概要 |
本研究は神経膠腫の予後に関係する遺伝子変異を、術前検査であるMRIやPETの画像から得られる指標を用いて術前診断することを目的としている。対象とする遺伝子としては、Isocitrate dehydrogenase (IDH)変異と、telomerase reverse transcriptase promoter (TERTp) 変異を対象として行っている。 IDH変異型の鑑別に関しては、grade2,grade3の神経膠腫を対象として行っている。拡散強調像から得られるADC値に関しては、筆者の先行論文で検討し有用であることが確認されており、今回の研究ではAPT画像と造影灌流画像(DSC)から得られるCBVについて検討を行った。ROC 解析において、APT(mean) はAUC 0.529、CBV (mean) はAUC 0.547であり鑑別能は低いという結果であった。 TERTp変異の鑑別に関しては、予後が悪いとされるIDH野生型の神経膠腫の中で、TERTp変異のあるものとないものに分類し、MRIから得られるADCとCBVについて定量値の計測を行った。今後、解析し、結果を論文投稿予定としている。 また、より安定した脳腫瘍のADC値の測定のため、新たな拡散強調像である2D turbo gradient- and spin-echo diffusion-weighted imaging with non-Cartesian BLADE trajectory (TGSE-BLADE DWI)の検討を行った。健常者と患者を検討し、副鼻腔近傍やクリップ近傍で歪みやアーチファクトが少ないことを証明し、日本磁気共鳴医学会で発表、来月には国際磁気共鳴学会で発表予定である。現在、論文投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IDH変異型の鑑別に関しては、grade2,grade3の神経膠腫を対象として有用な画像指標の検討をおこなっている。筆者の先行論文で検討し有用であることが確認されているADC値から追加して、今回の研究ではAPT画像と造影灌流画像(DSC)から得られるCBVについて検討を行っている。ROC 解析を行い、APT(mean)、CBV (mean) の鑑別能はやや低いという結果がでた。 TERTp変異の鑑別に関しては、予後が悪いとされるIDH野生型の神経膠腫の中で、TERTp変異のあるものとないものに分類し、MRIから得られるADCとCBVやFDG-PETにおけるSUV値について定量値の計測を行った。今後、解析し、結果を論文投稿予定としている。 より安定したADC値の測定のため、新たな拡散強調像であるTGSE-BLADE DWIについても検討を行い、国際学会で発表が決定しており、また論文投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
IDH遺伝子変異に関して、APT画像と造影灌流画像(DSC)の診断能が低かったため、造影灌流画像(DCE)を使用して有用性を検討する。また、客観的な形態評価からの診断能を検討するため、texture解析を追加する。 TERTp変異に関しても、現在測定しているADCとCBVに追加して、同様に造影灌流画像(DCE)やtexture解析の有用性についても検討する。MRIのみでなく、FDG-PETから得られるSUV値も検討予定である。 現在、cyclin-dependent kinase inhibitor (CDKN) 2A/B ホモ接合性欠失については遺伝子を調べられている神経膠腫が少なく、症例を蓄積中である。蓄積次第、画像指標との関連の検討を開始する。 上記の結果を合わせて、それぞれの遺伝子変異について、MRIやPET両者を含めた診断能の高い画像の組み合わせを検討する また、自動診断のため、腫瘍を自動でsegmentationする必要があり、より正確に腫瘍をsegmentationする方法を比較検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響で、昨年度前半の症例蓄積が低調であった。また、学会への現地参加が困難となり、旅費の使用額が減少した。 しかし、昨年度後半より症例蓄積が進み、ワークステーションやネットワークハードディスクなどの必要性が高まっており、購入予定としている。また、統計ソフトを購入し、統計解析も進めていく予定である。
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