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2021 年度 実施状況報告書

乳癌の形成・進展における新規ヒストン修飾制御因子の役割

研究課題

研究課題/領域番号 21K20841
研究機関熊本大学

研究代表者

高島 謙  熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (10802647)

研究期間 (年度) 2021-08-30 – 2023-03-31
キーワードヒストン修飾 / 乳癌
研究実績の概要

乳癌は女性で最も多い癌であり、その病態の解明や治療標的の探索は急務である。特に予後不良の乳癌ではエピジェネティクス異常が生じるが、その原因や意義は不明である。申請者は新規ヒストン修飾制御因子として分子Xを同定し、分子Xが転写抑制性のヒストン修飾であるH3K27me3修飾を制御する責任酵素と相互作用すること、さらには分子XがH3K27me3修飾を負に制御することを発見した。また、分子Xの高発現は乳癌の予後不良因子であること、乳癌組織ではH3K27me3修飾の程度が減少する。そこで、本研究では分子Xによる新規エピジェティクス制御機構が乳癌の形成・進展に及ぼす影響を明らかにすべく、令和3年度は下記3点について解析を行った。
(1)分子XがH3K27me3修飾酵素PRC2や脱メチル化酵素JMJD3に及ぼす影響を検討するため、分子X、PRC2、JMJD3などの精製リコンビナントタンパク質を用いたプルダウンアッセイを施行した。その結果、分子XはPRC2の構成因子EEDやJMJD3と直接結合することが明らかとなり、結合部位も同定した。
(2)分子Xがゲノムワイドでのエピゲノム状態や遺伝子発現に与える影響を調べるため、CUT&RUNおよびRNA-seqを施行した。その結果、分子X欠損細胞ではH3K27me3修飾のゲノムワイドでの変化が認められ、分子XがH3K27me3修飾のバランスの制御に重要であることがわかった。また分子X欠損細胞では遺伝子発現が顕著に変化しており、特に細胞周期やDNA複製などに影響を及ぼすことがわかった。
(3)生体での分子Xの乳癌形成への役割を評価するため、分子X欠損・過剰発現乳癌細胞を用い免疫不全マウスへの移植実験を行った。その結果、分子Xは生体での乳癌形成に必須であることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

申請時の実験計画はすでにほぼ全て着手しており、80-90%の実験が終了している。
実験に必要な試料も揃っており、研究計画の遂行には特に問題ないと判断した。

今後の研究の推進方策

まず分子Xがメチル化制御酵素と結合する現象について、詳細な解析を行う。具体的にはマイクロスケール熱伝導を用いて、分子間の相互作用を定量的に計測し、分子Xによるエピジェネティクス制御の分子基盤に対する知見を深める。さらに当初の研究計画に加え、CUT&RUNおよびRNA-seqから得られた結果に基づいて、分子Xが乳癌の細胞機能に及ぼす影響を調べる。具体的には細胞周期や細胞死、DNA損傷などについて細胞生物学的、分子生物学的に検討を行う。さらに分子Xの生体での役割を明らかにするため、分子Xトランスジェニックマウスの樹立にも着手する。

次年度使用額が生じた理由

RNA-seq解析を外部企業に受託する予定であったが、共同研究により遂行することができたため、当初の計画に比べ費用を大幅に減額することができた。また令和3年度は多くの学術会議がオンライン開催となり、それに伴って出張が取りやめになったため、旅費は使用しなかった。当初の研究計画は順調に進行しており、多くの知見が得られたため、令和4年度はこの知見をもとに、分子Xが乳癌の細胞機能に与える影響について、細胞周期やDNA複製に着目し解析を進める。これらの解析に必要な試薬を揃えるため、次年度使用額を使用する。また分子Xの乳癌形成への役割が明らかになったため、生体での分子Xの役割を明らかにするべく、分子Xトランスジェニックマウスの樹立にも着手する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて その他

すべて 国際共同研究 (1件)

  • [国際共同研究] ボストン小児病院/ハーバード医科大学(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      ボストン小児病院/ハーバード医科大学

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公開日: 2022-12-28  

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