悪性中皮腫は予後不良の難治性希少がんで 5 年生存率は 10% 未満である。悪性中皮腫において明らかとなった高頻度の遺伝子変異の多くががん抑制遺伝子であるため、分子標的薬の開発が遅れている。近年様々ながんを対象に、CRISPR library を用いた合成致死遺伝子スクリーニングによる抗がん剤開発が進められているが、悪性中皮腫は希少がんであるため利用できるサンプルが少なく研究が遅れている。本研究室では、日本人悪性中皮腫患者より独自に樹立した細胞株を30 株以上有している。本研究は、これらの細胞株を利用して、悪性中皮腫で高頻度に変異がみられる NF2 に着目し、この合成致死遺伝子を CRISPR library スクリーニングによって同定、さらに治療標的としての有用性を検証し、NF2 変異を有する悪性中皮腫患者に対する新規分子標的薬の開発を目指すものである。 本年度は、前年度に選定したNF2欠損悪性中皮腫細胞を用いて、スクリーニングに着手した。スクリーニングを開始するにあたり、ノックアウトウイルスの作製をはじめ、様々な条件検討や予備実験が必要であり、それらを完了させた後、スクリーニングを開始した。スクリーニングは、当初の予定どおり、細胞培養dishを用いた2D培養環境で行ったが、これに加え、ヌードマウスへの皮下移植を行うことで3D環境で培養するサンプルも用意した。ヌードマウスへの生着が悪く、増殖に時間を有しているが、全てのサンプルがそろった後、NGS 解析を行う予定である。
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