潰瘍性大腸炎(UC)の長期罹患例ではcolitic cancerの発生リスクが高い。colitic cancerの早期発見を目的として、初期発生に関わるp53異常に関して、p53免疫染色とターゲットシーケンス解析によるTP53変異の有無や変異タイプとの関連付けを行うため、経時的に採取された潰瘍性大腸炎患者の生検組織及び外科切除組織を用いて解析を施行した。 当院で潰瘍性大腸炎(UC)の内視鏡サーベイランスを行っている長期罹患例850例の臨床データベースを調査のうえ、大腸癌やdysplasiaの疑いにて外科的切除を施行した30例をリストアップした。そのうち研究同意が得られた23例について、組織学的異型度及びp53免疫染色の再評価、大腸発癌に関連する9個のドライバー遺伝子に関するターゲットシークエンス解析を行い、10例分について以下の結果を得ている(13例は現在、遺伝子解析中)。 1)癌症例においては、外科切除材料を用いた遺伝子解析で、約50%にTP53ミスセンス変異及びナンセンス変異を認めたが、p53免疫染色で陽性(強い核局在)と判定されたのは約25%であった。術前の生検材料における変異解析と外科切除材料の解析結果は全例で一致していたが、p53免疫染色では一致しない症例も含まれていた。 2)非癌症例の生検材料を用いたp53免疫染色で43%に強陽性(核局在)を認めた。また、遺伝子解析では25%にTP53変異を認め、約37%の症例にTP53以外のKRAS、BRAF、APC、FBXW7の変異を認めた。 3)遺伝子解析によって小さな生検材料においてもTP53遺伝子を検出できており、免疫染色と比較しても遜色のない評価が可能であった。
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