研究課題
近畿大学医学部微生物学講座(前教授 義江修先生)同大学薬学部化学療法学研究室(教授 中山隆志先生)の協力で、CC chemokine ligand 17 (CCL17)/Thymus- and activation-regulated chemokine (TARC)の受容体であるCC chemokine receptor 4 (CCR4)ノックアウトマウスを提供頂いた。本遺伝子改変マウスの凍結胚を供与頂き、本学動物実験施設において出産および個体数の確保を行った。CCR4遺伝子の欠損についてはDNAサンプルからgenotypingを行い、ホモ欠損のマウスを選抜した。同腹の遺伝子非欠損マウスを選抜し、対照マウスとした。本遺伝子改変マウスの外観、および成長については対照群と比較して相違はなく喫煙曝露の実験を行う上での支障はないものと考えられた。本遺伝子改変マウスおよび対照マウスに対し、最大6か月間の喫煙曝露を行い、肺気腫モデルを作成する計画とした。実験的肺気腫の誘導については、MIPS社の喫煙曝露装置を用いて、1日5本・週5日の喫煙曝露を行っている。現在、長期間喫煙曝露を行っている途中である。2022年5月には一部のマウスが6か月間の喫煙曝露を終了するため、肺組織標本を作製し、肺気腫の病変について定性および定量的評価を行う計画である。さらに本遺伝子改変マウスに対し、短期間の喫煙曝露を行い、気管支肺胞洗浄(BAL)を行い、細胞数および分画の評価を行った。現在までに7日間の喫煙曝露後にBALを行ったところ、遺伝子改変マウスおよび対照マウスともに総細胞数の増加とマクロファージ分画の増加を認めていた。現在検体数を増やし、統計学的な解析を進めていく計画である。さらに回収したBAL液については、炎症性サイトカイン、ケモカインの測定をELISA法で行う計画である。
2: おおむね順調に進展している
CC chemokine receptor 4 (CCR4)ノックアウトマウスは、凍結胚から順調に出生、生育し、喫煙曝露実験の遂行に支障がない状態で成長をしている。また現在に至るまで喫煙曝露実験を行っている中でマウスが途中で死亡するなどのトラブルも発生していない。マウスに対し肺気腫モデルを作成するためには、通常6か月間という長期間の喫煙曝露が必要となる。現在その喫煙曝露の最中であるため、結果を示すことはできないが、現在個体数を増やしながら実験を行っている途上であり、トラブルなく継続中である。またマウス個体数を確保しながら短期間の喫煙曝露による肺内の炎症状態を評価するための実験を施行中である。これらの実験は同時並行で行っているため、検体数を増やしながら実験を行っている。
現在CC chemokine receptor 4 (CCR4)ノックアウトマウスおよびその同腹コントロール(対照)マウスに対して長期間の喫煙曝露実験の最中である。2022年5月には一部のマウスが6か月間の喫煙曝露を終了するため、肺組織標本を作製し、肺気腫の病変について定性および定量的評価を行う計画である。今後組織標本を作成し、肺気腫の程度を定量化し、遺伝子改変マウスと対照マウスとの比較検討を行う。さらにマクロファージ細胞株を用いた細胞実験でCCR4の影響を検討する。これまでの研究では、CCL17/TARCでマクロファージ細胞株を刺激することにより、CCL2/MCP1産生が誘導され、siRNAでCCR4の発現を抑制するとCCL2/MCP1産生が低下することを示した。またCCL17/TARC刺激でマクロファージ細胞株の遊走が活性化することを認めている。これらの結果からCCL17/TARCがCCR4を介してマクロファージに作用することを示したが、詳細な機序が明らかにされていない。マクロファージ細胞株に対しCCR4阻害薬を投与することで、これらの反応の変化を観察し、CCR4受容体が刺激された下流のシグナルについて免疫染色およびウエスタンブロット法、RT-PCR法により検証する。
残金は、少額なので、次年度の消耗品購入に使用する予定です。
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