研究課題/領域番号 |
21K20866
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
加藤 秀一 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (40784286)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 統合失調症 / 自閉スペクトラム症 / ヒストンメチル化 / リンパ芽球様細胞株 |
研究実績の概要 |
近年、ヒストンメチル化酵素(HMT)及びヒストン脱メチル化酵素(HDM)の活性中心にあるゲノム変異と統合失調症(SCZ)及び自閉スペクトラム症(ASD)との関連が示唆されている。しかし活性中心のゲノム変異が及ぼす臨床表現型や本酵素の機能に与える影響は明らかでない。そこで我々は、Genotype-to-phenotypeアプローチ、即ちHMT/HDMの活性中心におけるゲノム変異の、 ① SCZ・ASDの発症との関連; ②患者表現型への影響; ③ ヒストンメチル化修飾への影響を検討し、当該ゲノム変異が来すヒストンメチル化修飾の障害によるクロマチン構造調節の破綻に着目した病態解明を目指すことを研究の目的とした。2021年度は、25種類のHMT/HDMの活性中心にある稀なゲノム変異の遺伝統計学的解析を実施した。27個の頻度の稀 (< 0.1%) な一塩基バリアント(SNV)を同定した。Short indelは同定されなかった。1個がナンセンスバリアント、1個がスプライスサイトバリアント、25個はミスセンスバリアントであった。SCZ患者において、健常群と比較して頻度の稀 (< 0.1%) なSNVを有意に多く認めた (p = 0.028)。ASD患者においては、健常群との間に統計学的有意差を認めなかった。ゲノム変異をもつ患者の臨床表現型解析および患者由来リンパ芽球様細胞株を用いた解析を行うための、ゲノム変異の情報を得ることができた。今後、患者由来リンパ芽球様細胞株を用いて、発現解析 (mRNA, タンパク質) とイムノブロット法によるヒストンメチル化修飾の解析を行い、ゲノム変異がヒストンメチル化修飾機能に及ぼす影響を明らかにする予定であり、必要なリンパ芽球様細胞株を樹立することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初2021年度に予定をしていた、統合失調症および自閉スペクトラム症の患者における、ヒストンメチル基転移酵素/ヒストン脱メチル化酵素の活性中心に位置するゲノム変異の遺伝統計学的解析を行うことができた。2022年度に予定しているゲノム変異をもつ患者の臨床表現型解析、およびゲノム変異をもつ患者由来リンパ芽球様細胞株を用いた解析のためのゲノム変異の情報を得ることができており、リンパ芽球様細胞株についても樹立できている。
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今後の研究の推進方策 |
ヒストンメチル基転移酵素/ヒストン脱メチル化酵素の活性中心に位置するゲノム変異の、 患者表現型への影響およびヒストンメチル化修飾への影響を検討し、当該ゲノム変異が来すヒストンメチル化修飾の障害によるクロマチン構造調節の 破綻に着目した病態解明を目指す。具体的には、2021年度に明らかとしたゲノム変異の情報をもとに、患者の臨床表現型解析、およびゲノム変異をもつ患者由来リンパ芽球様細胞株を用いた解析を行う。患者由来リンパ芽球様細胞株を用いた解析については、発現解析 (mRNA, タンパク質) とイムノブロット法によるヒストンメチル化修飾の解析を行い、ゲノム変異がヒストンメチル化修飾機能に及ぼす影響を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
同定をしたヒストンメチル化酵素及びヒストン脱メチル化酵素の活性中心にあるゲノム変異のうち、関連解析を行う候補となる変異の数が想定よりも少なかったため、関連解析を行うための試薬代が想定よりもかからなかった。2021年度中に、ゲノム変異をもつ患者由来リンパ芽球様細胞株の樹立を行うことができた。この細胞を用いた解析のための費用が想定よりもかかることが予想され、次年度使用額をあてる予定である。
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