申請者は、分岐鎖アミノ酸(BCAA)代謝障害モデルであるPPM1K欠損マウス(以下KO)においてピルビン酸負荷後の血糖上昇が軽微なこと、BCAA代謝産物である分岐鎖ケト酸(BCKA)が肝細胞において糖新生を抑制することから本研究を着想した。これまでの解析により、以下のような結果成果を得た。最終年度については、主に(4)、(5)を明らかにした。 (1)14Cでラベルしたピルビン酸の取り込みを測定することで、ミトコンドリアピルビン酸担体(MPC)の活性を測定し、BCKAが濃度依存的にMPCを阻害することを明らかにした。さらに、BCKAはMPCと結合し、アロステリックにMPCの活性を制御することが示唆された。(2)BCKAが、MPCを介して糖新生を抑制していることを明らかにした。(3)これまで用いていたマウス初代培養肝細胞に加えて、ヒト肝細胞株においてもBCKAによる糖新生抑制に矛盾しない実験結果を得た。(4)心臓由来のミトコンドリアでは、肝臓由来のミトコンドリアと比べ、BCKAによるMPC阻害が軽度であった。そのため、分岐鎖アミノ酸アミノ基転移酵素(branched-chain amino acid aminotransferase:BCAT、BCAA-BCKA間の可逆的代謝を担う酵素であり肝細胞で欠失している)を過剰発現させた肝細胞の解析などを行い、肝臓以外のミトコンドリアではBCATによりBCKAがBCAAへと代謝され、BCKAによるMPC阻害が減弱することがわかった。(5)13Cで標識したピルビン酸を用いて、ピルビン酸代謝経路の詳細な追跡を行い、BCKA負荷による代謝経路の変化がMPC阻害剤と同様であることを明らかにした。 上記の結果については、すでに原著論文を完成させ、学術誌へと投稿中である。
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