研究課題
研究活動スタート支援
本研究では、特発性肺線維症(Idiopathic pulmonary fibrosis; IPF)では、末梢気道上皮細胞の機能変化が病態に寄与しているという仮説の検証を試みた。8例のIPFの肺組織から選択した種々の線維化領域の末梢気道及び肺胞領域においてKRT17で免疫染色を行ない、KRT17陽性気道上皮細胞の分布について検討した。結果、KRT17陽性細胞は、IPF肺において末梢気道のみでなく、肺胞内にある化生した気道上皮細胞、Fibroblast fociを覆う気道上皮細胞、顕微鏡的蜂巣肺を覆う気道上皮細胞等に認められ、KRT17陽性気道上皮細胞の病態への密接な関与が示唆された。
医学
これまでIPFでは、Ⅱ型肺胞上皮細胞の機能異常が病態の本態であり、病理学的特徴とされる蜂巣肺は、肺胞領域の線維化の末期像であると考えられてきた。本結果から、近年報告されているIPFに特徴的なKRT17陽性の基底細胞様の上皮細胞が、線維化領域やfibroblast foci, 顕微鏡的蜂巣肺の領域に認められることが病理学的に証明され、気道上皮細胞の病態への関与が示唆された。将来的にこれらの細胞の遺伝子発現変化を検討できれば、IPFにおける末梢気道上皮細胞の機能異常の詳細を検討できると考えられる。