研究課題
糖尿病患者では非アルコール性脂肪性肝疾患の合併率が50%近くになり、脂肪肝炎は心筋障害のリスク因子であるが、それらをつなぐ因子は明らかではない。そこで我々は酸化ステロールのうち、7ケトコレステロール(7KC)に着目した。7KCは、コレステロールを含む食品の空気中の酸素による酸化のほか、調理による酸化、体内のコレステロールの活性酸素種(ROS)による酸化などにより生成される。糖尿病や心血管疾患の患者では、血漿中の7KCが有意に高いことが示されているが詳細なメカニズムは不明であった。我々は、以前の検討で肥満モデルであるob/obマウスやdb/dbマウスに7KCを投与し、脂肪肝炎が促進されることを報告した(Frontier Endocrinol.2021;11,614692)。本研究では、 糖尿病モデルに7KCを餌に混餌して投与し、心筋障害を惹起するかどうかを検討した。8週年の野生型雄マウスにストレプトゾトシン(STZ)を腹腔内投与し、血糖値150-250㎎/dlのマウスを糖尿病マウスとした。高脂肪性の脂肪肝誘導食にコレステロール比1%の7KCを混餌して、STZ糖尿病マウスに4週間から12週間投与し、肝臓、心筋の組織増、mRNA、WBを解析し、心機能を超高磁場MRIで解析した。肝臓では、遊離コレステロール、トリグリセライドの蓄積が増加のほか、炎症細胞浸潤や線維化の亢進も認められた。それに伴って、心筋組織でもIL-1βを中心としたインフラマソーム系の炎症マーカーの亢進を認めた。超高磁場MRIでの観察では、7KC投与群、非投与群ともに軽度の心筋障害を認めたが差は認められなかった。糖尿病の誘導のため投与したSTZが不可逆的な障害を惹起していた可能性が示唆された。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
International Journal of Molecular Sciences
巻: 23 ページ: 15855~15855
10.3390/ijms232415855