研究課題/領域番号 |
21K20871
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
赤谷 律 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (30910004)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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キーワード | 視神経脊髄炎 / 視神経脊髄炎スペクトラム障害 / 制御性B細胞 / プラズマブラスト / 形質芽細胞 / インターロイキン6 |
研究実績の概要 |
本研究では、以下の3つの方法を用いて研究を実施する計画とした。それぞれの計画についての実績は下記のとおりである。 ①in vitro培養系を用いて病原性ないし制御性B細胞分化誘導条件を検討する計画については、予備実験でB細胞のPBへの分化誘導系を確立し、抗IL-6受容体抗体の添加によりPBにおける制御性B細胞が誘導できることを確認した。また、RNAシークエンスによる網羅的遺伝子発現解析を行い、免疫制御性の機能を発揮するPBのマーカー候補として、CD200分子が浮上し、この所見はNMOSD患者の急性期と寛解期の比較においても有意差として確認した。 ②アストロサイトとの共培養系を用いてNMOSDにおける中枢神経内のB細胞動態を明らかにする計画については、予備実験としてB細胞とアストロサイトとの共培養系を用いることでアストロサイトがPBの生存を延長することを確認し、アストロサイトとの共培養によってPBのIL-10発現が上昇することが見出せたが、IL-6シグナルの阻害による有意な変化はみられなかった。また、この共培養の系ではB細胞の数が著減する場合があり中枢神経内での病態を明確に反映した所見と言えるかどうかは未だはっきりしていない。 ③in vivoモデルを用いた制御性B細胞誘導の鍵となる分子を検証する計画については、最終段階として実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)マウスモデルを用いて候補分子発現細胞の移入実験による機能解析を行い、加えて候補分子のノックアウトマウスを作成しEAEモデルを用いた実証実験に向けた準備を行う予定であるが、未だ実現には至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
①in vitro培養系を用いて病原性ないし制御性B細胞分化誘導条件を検討する計画について、IL-6シグナルを阻害しながらB細胞の分化誘導を行ったのち、RNAシークエンスによる網羅的遺伝子発現解析を行い、免疫制御性の機能を発揮するPBのマーカー候補としてCD200分子を同定した。またNMOSD患者における急性期と寛解期の比較でもPB上のCD200に有意差がみられたが、蛋白レベルでの機能解析に想定以上に時間を要している。具体的には、末梢血単核細胞を対象にレンチウイルスおよびshort hairpin RNAを用いたRNA干渉によってCD200のノックダウンを試みたが、レンチウイルス感染によりCD200の発現が大きく低下してしまい本来の目的である効率的なノックダウンができなかった。 ②アストロサイトとの共培養系を用いてNMOSDにおける中枢神経内のB細胞動態を明らかにする計画について、アストロサイトとの共培養によってPBのIL-10発現が上昇することが見出せたが、IL-6シグナルの阻害による有意な変化はみられなかった。また、この共培養の系ではB細胞の数が著減する場合があり中枢神経内での病態を明確に反映した所見と言えるかどうか未だはっきりしないためいったん中断している。 ③in vivoモデルを用いた制御性B細胞誘導の鍵となる分子を検証する計画については、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)マウスモデルを用いて候補分子発現 細胞の移入実験による機能解析を行い、加えて候補分子のノックアウトマウスを作成しEAEモデルを用いた実証実験に向けた準備を行う予定であるが、未だ実現 には至っていない。 総合的に3つの計画のうち、①については進展あり、②については中断中、③は開始に至っておらず(準備段階)、やや遅れていると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
①in vitro培養系を用いた制御性PBの機能検証実験については、RNA干渉の手法は一旦中断し、ブロッキング抗体を用いた手法や、T細胞、単球、単球由来樹状細胞などとの共培養の系を計画しており、こちらを進めていく予定である。 ②アストロサイトとの共培養系を用いてNMOSDにおける中枢神経内のB細胞動態を明らかにする計画については、いったん中断したままとする。 ③in vivoモデルを用いた制御性B細胞誘導の鍵となる分子を検証する計画については、①での知見についてある程度のめどが付けばin vivoでの実験を開始する方針とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
RNA干渉に用いるベクター等は研究室内の他の研究者が使用していたものを流用でき、遺伝子解析等には契約していたソフトウェアの他にもフリーソフトを使用することが可能となったため、当初の予定より支出が少なく次年度使用額が生じた。 次年度の使用計画としては、現在着目しているタンパク質機能解析のための試薬購入、in vivo実験のための実験動物購入に充てる予定である。
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