研究課題
多系統萎縮症における脱髄機序を解明するため、グリア細胞間でギャップ結合を形成し機能的連絡を担うコネキシン蛋白に着目して病理学的解析を行った。病理学的に診断確定した多系統萎縮症患者剖検15例を対象とし、リン酸化αシヌクレインの蓄積がみとめられた小脳白質や橋底部の入力線維におけるアストロサイトのCx43とCx30、オリゴデンドロサイトのCx32とCx47を免疫染色し、その他GFAP、AQP4、MAG、MOG、TPPP、CD68、neurofascin、claudin-11を使用し、発現パターンを比較検討した。脱髄の程度によりStage I(早期)、Stage II(中期)、Stage III(末期)に病変を病期分類した。Stage Iでは、Cx32がオリゴデンドロサイトの細胞膜や髄鞘から消失し、リン酸化αシヌクレインとともに細胞質内に共局在することを見出した。Cx47はstage IIからオリゴデンドロサイト細胞膜やミエリン鞘から発現低下が観察された。アストロサイトのCx43はstage Iでのみ発現低下し、stage IIやstage IIIではアストログリオーシスを反映して発現亢進がみとめられた。Cx43-Cx47で形成されるギャップ結合数を半定量すると、全てのStageでギャップ結合数が有意に低下していることが判明した。脱髄病巣にはCD3陽性T細胞やCD68陽性マクロファージが浸潤しており、炎症反応の関与も推測される。ギャップ結合は軸索の電気的興奮で発生したKイオンを血管内まで戻すために重要な役割を担い、グルコースやATPなど細胞の恒常性維持に必須の物質の細胞間移動に重要とされる。多系統萎縮症における早期からのコネキシン蛋白の発現異常がグリアネットワークを介する恒常性破綻、ひいては脱髄形成に寄与している可能性が示唆された。以上の研究成果を原著論文として発表した。
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Brain Pathol.
巻: Online ahead of print ページ: e13131
10.1111/bpa.13131.