早産児にとって脂質は重要なエネルギー源としてだけでなく、成長や発達に不可欠な栄養素の一つであるが、脂肪酸から産生されるオキシリピンが早産児にどのような影響を与えるのかは未だ不明である。申請者らは、オキシリピンに着目し、早産児における慢性肺疾患との関係を明らかにする。申請者らは32種類のオキシリピンを在胎30週以下で出生した早産児の血液を用いて経時的に測定した。リノール酸から産生される血中オキシリピンは13-HODEが最も多く、生後1週間からは低下傾向であった。また、アラキドン酸から産生される血中オキシリピンは12-HETEが最も高値であった。ドコサヘキサエン酸から産生される血中オキシリピンは4-HDHAが最も多く、生後日数とともに減少を認めた。 早産児のおける血中オキシリピンの変化は、早産児が摂取する栄養の影響を強く受けていることが判明した。特に、生後数日の急性期では脂肪乳剤の影響が強く、リノール酸からの炎症惹起作用を有するオキシリピンが増加していた。また、慢性期では経腸栄養からの栄養が、ドコサヘキサエン酸からの抗炎症作用を有するオキシリピンに影響していた。この炎症惹起作用と抗炎症作用のオキシリピンのバランスが早産児に何らかの影響を与えている可能性がある。 現在、申請者らが測定可能なオキシリピンは32種類であるが、より詳細な病態の把握のためにαリノレイン酸やドコサヘキサエン酸からのオキシリピンの測定項目を増やしている。
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