研究課題
前年度の研究で低用量のインターフェロンガンマ(IFNg)がヒト腸管オルガノイドのサイズを有意に増大させその腸管上皮に対する増殖活性が示された。我々はそのメカニズムを探索するためIFNgを加えたヒト腸管オルガノイドの遺伝子発現をreal time PCR法で評価した。MYC遺伝子の発現が早期に亢進することが示され、さらに腸幹細胞の細胞周期の制御に重要でMYCの標的遺伝子でもあるCCND1の発現亢進も同時にみられた。この結果はヒトの腸管上皮でもIFNgによる腸管上皮の増殖にIFNg→MYC→CCND1の経路が関与していることを示唆する。また前年度、マウス同種移植モデルでGVHDを発症したマウスでは腸管上皮の増殖に一致してc-Mycの発現亢進がみられた成果を踏まえ、GVHDマウスに選択的Myc阻害剤である10058-F4の全身投与を行って腸管GVHDに対するその効果を検証した。本報告時点までの解析で10058-F4の投与が腸管GVHDの障害程度の指標の一つである腸管クリプトの減少や腸管GVHDの病理スコアを有意に増悪させる結果が得られている。この結果はMyc遺伝子を介した腸管上皮の増殖・再生が腸管GVHDの改善に寄与している可能性を示すものである。上記の成果を踏まえ、将来的な課題としてヒト腸管オルガノイドにおけるIFNgによるMYC発現亢進の機能的役割、具体的には増殖活性について培養に選択的MYC阻害剤を加えることで検証する。また、GVHD発症マウスで選択的MYC阻害剤の投与がGVHD生存率に与える影響を検証する。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
International Journal of Hematology
巻: 116 ページ: 603~611
10.1007/s12185-022-03394-w