研究課題/領域番号 |
21K20887
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
村井 康久 弘前大学, 医学研究科, 助手 (10910458)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | Schlafen11 / 炎症性腸疾患 / 潰瘍性大腸炎 |
研究実績の概要 |
本研究は令和3年9月に採用となり、令和3年度後期(10月)より実質的に始動した。当該年度に実施した研究の成果は以下の通りである。 (1)慢性炎症を反映した炎症性腸疾患(IBD)・colitic cancer診断の診断補助マーカーとしての検討;既報に基づき潰瘍性大腸炎(UC)と内視鏡的重症度の検討を主に検討した。Mayo endoscopic subscore(MES)を用いた内視鏡的重症度と腸管上皮生検サンプルでのSLFN11 mRNA発現の検討では、MESの増加に伴いSLFN11 mRNA発現も上昇していた(n=20/群, p=0.003)。サブグループ解析ではMES0とMES1間で有意差を認めており(p=0.02)、SLFN11 mRNAの増加は粘膜の軽微な炎症の残存を反映していることが示唆された。colitic cancerにおけるSLFN11の発現の検討はまだ検討できていない。 (2)ステロイド抵抗症例・依存症例におけるSLFN11発現の検討;MES2-3で検体採取の直前または直後でステロイド全身投与(≧Prednisolone0.5mg/㎏/day換算)による治療強化が行われた症例を解析した。臨床経過により、後方視的にステロイド反応良好群(n=10)と抵抗群(n=9)に分類して解析を行い、ステロイド抵抗群でSLFN11が高い傾向であった(p=0.183)。症例数が予定していた20例/群に満たず、有意差は現時点で得られていない。 (3)各種免疫統御療法による病理学的粘膜治癒とSLFN11発現の逆相関の検討;症例別のSLFN11発現を後方視的に検討したところ、内科的治療介入により内視鏡的寛解達成またはMES低下が得られた症例では治療後にSLFN11 mRNA発現低下を認めた(n=16, p=0.0013)。現在、SLFN11高発現例に有効な免疫統御療法を検索している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は令和3年度後期(10月)より始動となり、実験環境整備に時間を要した。また、潰瘍性大腸炎を含めた炎症性腸疾患の症例サンプル並びに健常コントロールサンプルが当初の予定より確保できておらず、研究がやや遅れている状態である。
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今後の研究の推進方策 |
(1)関連施設等にも協力を仰ぎ、炎症性腸疾患症例のサンプル収集を進める。ステロイド反応良好例ならびに抵抗例の症例も蓄積する。 (2)各種免疫統御療法で寛解導入した症例を追跡し、SLFN11の発現変化を検討することで、SLFN11陽性症例への特に有効な治療候補を検討する。 (3)潰瘍性大腸炎のオルガノイドモデルでは時間と費用のコストがかかるため、SLFN11陽性の大腸癌セルラインを代替とした実験系を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年9月に採用が決定され、2021年10月より実質的に研究が開始された。半期のみの研究であり、試薬の購入など物品費が予定より少なくなっている。2022年度は免疫染色等への実験への試薬購入が増えることが見込まれる。また、研究成果発表のため旅費が増えると思われる。
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