研究課題/領域番号 |
21K20887
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
村井 康久 弘前大学, 医学研究科, 客員研究員 (10910458)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2025-03-31
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キーワード | Schlafen11 / 炎症性腸疾患 / 潰瘍性大腸炎 |
研究実績の概要 |
令和5年度に行った研究は以下の通りである。 (1)既報ではSLFN11の過剰発現によってROSの過剰産生が起こり、腸管上皮のアポトーシスが誘導されると報告されている。Tofacitinibによるヒト腸管上皮細胞におけるSLFN1発現の変化;難治性UCでTofacitinibにて加療した症例(n=10)を抽出して、SLFN11発現の推移を後方視的に検討した。臨床的または内視鏡的に改善が得られた有効7例と無効3例において、major intensity scoreの検討では、tofacitinib有効群でSLFN11陽性例が多く、さらにH-scoreを用いた解析でもtofacitinib有効群でSLFN11のスコアが高い結果であった。そのため、tofacitinib有効群では無効群と比べ、治療前の腸管上皮においてアポトーシスが多く観察されるのではないかとの仮説をたて、病理専門医によりHE染色プレパラートを病理組織学的に評価することでアポトーシスの評価を行った。症例により、step biopsyのサンプル数に差異があるため、アポトーシス細胞の総数を検体数で除して1検体当たりのアポトーシス数を比較した。tofacitinib有効群では0.45±0.43、無効群では0.77±1.21であり、平均としては無効群でアポトーシス数が多いという結果になり、我々の予想と反する結果となった。この背景として、無効群には多くのアポトーシスを伴う薬剤性腸炎の症例が含まれている可能性が考えられた。また、SLFN11自体が古典的なアポトーシスとは異なる機序で、腸管上皮の細胞障害に寄与している可能性も考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
潰瘍性大腸炎を含めた炎症性腸疾患の症例サンプルが当初の予定より確保できていない。また、研究代表者が学外へ異動となり、現在の職場における医師の働き方改革もあり、研究に充てる時間の制約が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)関連施設等にも協力を仰ぎ、炎症性腸疾患症例のサンプル収集を進める。ステロイド反応良好例ならびに抵抗例の症例も蓄積する。 (2)tofacitinib以外のJAK阻害薬で寛解導入した症例を追跡し、SLFN11の発現変化を検討する。 (3)潰瘍性大腸炎のオルガノイドモデルでは時間と費用のコストがかかるため、SLFN11陽性の大腸癌セルラインを代替とした実験系を確立する。 (4) アポトーシスはヒト検体では種々の交絡因子があると思われるため、大腸癌セルラインでのin vitroな研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度は、研究の遂行にあたり試薬の購入などの物品費が予定より少なくなった。2024年度は実験への試薬購入費、研究の解析、及び研究成果発表への旅費の増大が見込まれる。
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