研究課題/領域番号 |
21K20891
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 謙一郎 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (10908495)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 歩行解析 / 自動解析 / 姿勢推定 / 深層学習 / 時計描画テスト / 認知機能低下 / スクリーニング |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病やパーキンソン病をはじめとする神経変性疾患において、前駆期・極早期といったごく早期に検出できることが望ましいと考えられるが、早期段階における症状は文字通り軽微であるため、それ自体で病院を受診することはまず期待できず、一般老年人口の中で誰がちょうど前駆期に該当するのか拾い上げが難しいという問題がある。これに対して、web上(含スマートフォン)での早期検出を目的としたアプリケーションを用意し、幅広い人に利用してもらうことで解決できるのではないかと期待できる。このために、『所見を撮影したビデオ動画に対して(モーションキャプチャの代用として)姿勢推定ライブラリを用いることによる、神経所見の自動解析手法』を開発することを本研究では目的とした。 初年度として、まず動画解析の対象となる動画サンプルのデータ取得を進めている。必要な手続きとして倫理承認の修正申請により、データのよりスムーズな取得が可能になった。対象被験者は当初の計画通り、脳にアミロイド蓄積が開始しているが認知機能低下は明らかではない「プレクリニカル アルツハイマー病(AD)」とした。また取得対象の動画として、前後方向の通常歩行に加えて、パーキンソン病患者に対する神経診察で頻用されるUPDRS・Motorに関する診察所作についても動画撮影を行うことにした。現在、サンプルデータの収集途上である。 また、歩行以外にモバイルアプリなどweb入力形式に落とし込みうる検査項目として、認知機能を検出する時計描画テスト(CDT)に着目した。CDTのスクリーニングテストとしての可能性を検討するため、大規模なコホート研究で得られている画像データを用いて、メモリークリニックの患者など比較的に背景が揃った集団の中ではなく、ヘテロな背景を持つ集団の中での予測モデルを作成し、その性能について一次評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歩行および動作についての動画データは取得を進めている。また他の神経疾患(例えば正常圧水頭症など)についての定量化手法についての検討も開始した。 また、歩行以外でweb上での認知機能低下を検出する枠組みとして時計描画テスト(CDT)のスクリーニングの有用性を検討した。ここにおいては、深層学習による画像分類を用いて認知機能低下の状態判定を行うモデルを作成し、先行研究と比較した。この成果は論文として発表した(Frontiers in Neurology 2022, in press)。
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今後の研究の推進方策 |
歩行および動作についての動画データは取得を引き続き進めていく。またこれまで論文発表したような歩行についての解析手法だけではなく、UPDRSの診察において検討される複数の運動所作についても、有用な定量化手法について検討していく方針である。またすでに述べたように他の運動症状を伴う神経疾患(正常圧水頭症など)についても、データ取得し評価できるように調整を行なっていく方針である。 また時計描画テストについては、タブレット上で行なってもらったのちにデータとして取り込んで深層学習モデルに入力する、という一連の実装を可能にするための方策を検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
もともと歩行解析に際して必要となる測定機材、論文投稿に際して必要な校正費用や投稿費用、などをメインの支出と想定していた。測定機材については選定において少し慎重に再検討する必要が出てきたため、購入時期が遅くなったため今年度は購入しないことになった。また論文投稿については、採択の時期などの関係で、予定よりも少なくなっている(その分は来年度の支出になる予定である)。
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