研究実績の概要 |
サルコペニアでは主に速筋繊維が影響を受け, 骨格筋内の速筋/遅筋割合が変化すること, 筋量低下に先行して筋力低下を認めることなどを特徴とし, 廃用や加齢に伴う筋委縮とは異なる新しい疾患概念である. 長寿遺伝子であるSirt1は, 全ての細胞で発現しているエンザイムであり, 骨格筋でもミトコンドリア容量や機能の維持に関与する. しかしその詳細なメカニズムやサルコペニアとの関連は未解明であり, 本課題では長寿遺伝子Sirt1の速筋特異的作用に着目したサルコペニアの制御メカニズム解明を目的とした. 具体的な手法としては, MCL1f-CreマウスとSirt1 flox/floxマウスを用い, Cre-LoxPシステムにより速筋特異的Sirt1KOマウスを作成する. これらとコントロールマウス (Sirt1 flox/flox)を比較し, 各月齢における身体機能・認知機能・老化関連因子の測定, インスリン抵抗性に関する比較検討を行う. また筋骨連関の解明や次世代シークエンサー解析やバイオインフォマティクス解析によるサルコペニア関連遺伝子の探索を企図する. 当該年度では上記マウスモデルの作成及び安定的な飼育に成功した. KOマウスは雌雄ともに正常発育し, 妊孕性にも問題を認めなかった. 若年期において体重や骨格筋量, 筋力・持久力, 遺伝子発現を比較検討した結果では, fmSirt1KOマウスは対照群と比較して体重および各種骨格筋重量で有意差を認めず, これらは加齢によっても変わらなかった. 一方, 持久力についても若年期では有意差を認めなかったが, 加齢に伴って持久力の差を認めた. 骨格筋分化に関与するMyoDなどの遺伝子発現変化も示唆されるところであった.
|
今後の研究の推進方策 |
当該年度の研究によって確立・検証したマウスモデルを用い, 今後は主研究目的を遂行する研究へと移行する. 得られたマウス骨格筋を基に遺伝子発現解析・ミトコンドリア機能とメタボローム解析, 糖代謝機能の測定・評価を目指す. また現時点では若年マウスの解析が中心であり, 今後は加齢に伴う上記の推移にも着目する. これらの課題について継続・発展的に研究を遂行し, その成果を国際学術誌において発表することを目指す.
|