今後の研究の推進方策 |
まずは刺激条件の最適化を行う。これまでの実験では近赤外光のファイバーを露出した迷走神経の直上に置いたが、本実験では神経とファイバーの間に皮膚やその他の組織が存在するので、ファイバーの位置・角度及び光の強度を最適化する必要がある。迷走神経刺激は心拍数・呼吸数を低下させるので、最適化の目安として低下幅が10%以下になる条件を探す(過度の心拍数・呼吸数低下は慢性腎臓病進行に影響を与えうるため)。5 Hz/10分という迷走神経刺激の条件で急性腎障害が抑制されたので(Tanaka, et al. 2021 PNAS)、これらの条件は固定する。条件最適化後、慢性腎臓病モデルマウスに迷走神経刺激を連日施行する。慢性腎臓病誘導のため、片側腎虚血再灌流または葉酸投与を行い、Day 3に手術で左頚部迷走神経にアップコンバージョンナノ粒子を局所投与し閉創する。Day 4-13に連日、麻酔下で左頚部迷走神経に体外から近赤外光レーザーを照射し、青色光を迷走神経局所で発生させ、ChR2発現線維を刺激する。Day 14に腎臓・血液を採取し、迷走神経遠心性・求心性線維刺激の腎線維化(慢性腎臓病進展)への効果を調べる。保護効果が得られれば、脾摘やβ2ブロッカー投与で保護効果が消失するか(急性腎障害に対する保護効果と同一メカニズムか)検討し、さらに腎臓・脾臓の免疫細胞のphenotypeをフローサイトメトリーで調べる計画である。
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