研究課題/領域番号 |
21K20900
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
井上 浩輔 京都大学, 医学研究科, 助教 (80903830)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 血圧管理 / 因果推論 / 心血管疾患 |
研究実績の概要 |
本研究テーマの枠組みにおいて、世界の高血圧診療に大きなインパクトを与えた大規模ランダム化比較試験Systolic Blood Pressure Intervention Trial(SPRINT)の二次解析を行った。収縮期血圧の目標値を120mmHg未満(厳格降圧群)または140mmHg未満(標準降圧群)に無作為に割り付けられた9,361人のSPRINT全参加者を対象とした。黒人およびそれ以外の人種(白人、ヒスパニック、アジア人)において、それぞれCox比例ハザードモデルを用いて、居住環境(一人暮らしか否か)ごとの、厳格降圧群の心血管アウトカム抑制効果を推定した。さらに一般化公式を応用することで、集団全体における黒人・一人暮らしの割合が増えた際に想定される厳格な血圧管理の効果を計算した。
属性は平均年齢68歳、女性36%、黒人30%、一人暮らし29%であった。黒人において、誰かと居住している人は、厳格な血圧管理による心血管アウトカム発症率の有意な減少を認めたが(HR=0.53 [95%CI、0.33-0.85])、一人暮らしでは同様の効果は認められなかった(HR=1.07 [95%CI、0.66-1.73]、p-for-interaction=0.04)。集団全体において、黒人・一人暮らしの割合が8割を超えた場合、厳格な血圧管理の心血管イベント発症抑制効果を認めないことが、一般化公式によって推定された(HR=0.95 [95%CI、0.82-1.04])。
本研究結果は、心血管の健康を維持・改善するためには、画一的な血圧管理では不十分であり、人種ごとの居住形態を考慮して治療することが重要であることを示唆する。本研究結果は米国内科学会の公式雑誌JAMA Network Openに掲載された。JAMA Netw Open. 2022 Mar 1;5(3):e222037.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本テーマにおいて論文を米国国際誌(JAMA Network Open)に出版することができ、研究は順調に経過している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として以下の二つを考えている。
まず、厳格な血圧管理を検討するうえで、社会経済因子も含めた生活背景を考慮したうえで注意深く検討する必要があるか、他のコホートにも適応し確認する。
次に、本研究で得られた知見を今後の研究に応用することで、属性による効果の異質性(ばらつき)がどの程度存在するのかを明らかにし、各治療の一般集団への介入効果を推定する研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により当初計画していた海外とのミーティングなどが十分に実行できなかったことが原因として挙げられる。今年米国のコロナ状況が落ち着いてきたことから、国際学会の予定も組んでおり、論文掲載費用と併せて執行する予定である。
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