研究課題
ヒト膵β細胞発生・成熟過程における脂肪酸代謝動態を解明するため、ヒトiPS由来膵β様細胞における脂肪酸合成関連遺伝子の発現の推移を明らかにした。3次元分化誘導法を用いて遺伝子発現量を定量的PCRにて評価したところ、分化22日目の膵β様細胞はiPS細胞に比べ、MLXIPLを27.6倍、ABCD3発現を4.2倍、ACLY発現を3.8倍高発現していた。これはマウス胎生膵での結果と一致しており(Sasaki S, et al. Diabetologia 2022)、ヒト膵β細胞においても脂肪酸合成の重要性が示唆された。脂肪酸代謝関連小分子による介入でiPS由来膵β様細胞への分化誘導効率の改善を試みた。膵β様細胞でiPS細胞に比べ遺伝子発現が9.2倍と高値であったPPARGに注目した。分化15日目から22日目までピオグリタゾン(PPARγアゴニスト)またはGW9662(PPARγアンタゴニスト)を投与した結果、膵β様細胞誘導率は対照群(DMSO投与)39.6±7.3%に比し、ピオグリタゾン 16.3±7.5% GW9662 15.1±5.4%と改善を認めなかった。次に、インスリン発現に先駆けて膵内分泌前駆細胞でiPS細胞に比べ遺伝子発現が6.6倍と高値となっていたPPARAに注目した。分化15日目から22日目までGW6471(PPARαアンタゴニスト)を投与した結果、インスリン遺伝子発現が3.7倍、MLXIPL遺伝子発現が3.8倍へ上昇し、脂肪酸合成経路の変化を介した膵β様細胞誘導効率の改善が示唆された。さらに、最終代謝物を直接定量可能なリピドーム解析を用いて、膵β細胞分化・成熟過程における脂質代謝の変化を明らかにするために、MLXIPLノックアウトヒトiPS細胞を作製した。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 5件)
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