現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最新の報告ではEpsilon構造のlower-stem内にDRACH motifが存在することが明らかとなっている (Kim et al., PNAS 2022)。過去の実験データにおいてはDRACH motifの配列変化がウイルス複製に大きく関与することが分かっており、そこでHBVにおけるN6メチルアデノシン修飾モチーフ配列の保存性に関する検討を行った。既報では、m6AはHBVの転写産物の安定化、およびpregenomic RNAの逆転写を制御することが明らかとなっている。そこで、ヒトを含む様々な宿主に感染するHBVにおけるDRACH motif配列の保存性について検討を行った。ヒトHBVの各遺伝子型および各種宿主に感染するHBVのDRACH motifに相当する部位の配列、保存性の高いDR1、DR2配列、 そしてランダムに抽出したS領域の配列について、配列保存性の比較検討を行った。各種HBVのDRACH motif % identityはDR1, DR2と同レベルの保存性を示した。ランダムに抽出したヒトHBVの各遺伝子型や各種宿主に感染するHBVにおけるS領域の配列と比較して、DRACH領域は有意に高度な保存性(p <0.001)を示した。配列を詳細に解析すると、ヒトHBV遺伝子型G型においてはDRACH motifが保存されておらず、したがって、HBV遺伝子型G型のウイルス学的特徴に影響を及ぼしている可能性が示唆された。今回の検討からHBVにおけるDRACH motifは, 高度な保存性を示し, すなわちDR1やDR2と同レベルの保存性を示す領域がHBVゲノムに存在することが明らかとなった。 また, DRACH領域の変化はウイルス遺伝子型の特性に影響を与える可能性を示唆するデータであり、今後さらに検討を進める。
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