本研究は急性期脳梗塞患者に対して造影剤を使用せずに迅速に脳組織の低灌流領域を描出できる次世代MRI画像バイオマーカーを確立させることを目指すものである. 豊川市民病院に脳卒中発症後24時間未満で入院した前方循環の主幹動脈閉塞患者21例(男性12例,女性9例,平均年齢±SD:76.1±7.4歳)を連続的に対象とした.従来のDWI-PWIミスマッチを用いて求めた虚血性penumbra容積と我々が開発したPRESTO-QSMから求めたOEFの上昇部位容積との比較を行った.両者の間で相関関係を認めたことから,PRESTO-QSMが急性期脳梗塞の治療選択を導くペナンブラバイオマーカーとしての可能性があることが明らかになった(Frontiers in Neurology 2022). その後,QSMとR2*画像を組み合わせて白質における微細構造の変化と鉄沈着を区別することができる可能性についてを検討する研究へ発展させた.豊川市民病院のもの忘れ外来に通院中の正常圧水頭症の可能性があると臨床的に診断された患者16人と,年齢と性別の類似性に基づいてマッチさせた18人の健常対照を評価した.左上縦束と右矢状層における鉄沈着を伴わない微細構造の変化と,iNPH患者における認知障害および歩行障害との関連を明らかにした(Frontiers in Neurology 2023). ここまでの研究でQSMの急性期疾患への利用や,変性疾患への利用について有用であることが分かり,今後も様々な疾患への利用について発展させていきたい.
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