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2021 年度 実施状況報告書

NLRP1変異による自己炎症の病態機序解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K20912
研究機関順天堂大学

研究代表者

安東 泰希  順天堂大学, 医学部, 助手 (10912644)

研究期間 (年度) 2021-08-30 – 2023-03-31
キーワードインフラマソーム / NLRP1 / 肝臓線維化
研究実績の概要

我々の研究グループは、肝硬変を伴う小児稀少疾患患者から同定されたNLRP1の点変異(NLRP1-P1214L)がNLRP1インフラマソームを異常活性化させることを見出した。本研究の目的は、NLRP1-P1214Lによる肝細胞のインフラマソーム活性化亢進が肝硬変を引き起こす病態機序を解明することである。異常高値を示した患者の血清IL-18が肝臓移植により大きく低下したこと、肝臓組織で肝細胞と一致してIL-18の高い発現が認められたこと、患者由来肝細胞株が恒常的にIL-18を大量に産生し、その細胞株でNLRP1を特異的にノックダウンするとIL-18の産生量が低下したことから、肝細胞におけるNLRP1-P1214Lによるインフラマソームの活性化亢進が肝臓繊維化を誘導する可能性を示した。さらに、P1214L点変異によりNLRP1と(NLRP1インフラマソームの活性化を抑制する)DPP9の結合が低下して、DPP9による抑制作用が解除されることを示し、NLRP1-P1214Lがインフラマソームを異常活性化させる分子機序を明らかにした。また、特異な病態形成におけるNLRP1-P1214Lの役割を明らかにするため、NLRP1-P1214Lのコンディショナルノックインマウスの解析を開始した。最初に、NLRP1-P1214Lが肝細胞特異的に発現するマウスの肝細胞でNLRP1-P1214Lが発現することを確認した。このマウスは、体重増加などの発育に異常を示さず、観察期間中の血清GOT・GPT値や血清IL-18・IL-1beta値は正常範囲以内であった。肝臓組織においても炎症細胞浸潤や肝臓繊維化などの異常は認められなかった。肝細胞にNLRP1-P1214Lが発現するだけでは、インフラマソームの活性化亢進による肝臓繊維化には至らない可能性が示された。現在、肝臓繊維化に至る分子機序を解析している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

P1214L点変異によりNLRP1と(NLRP1インフラマソームの活性化を抑制する)DPP9の結合が低下することを示し、NLRP1-P1214Lがインフラマソームを異常活性化させる分子機序を明らかにした。また、遺伝子改変マウスを利用して、肝細胞にNLRP1-P1214Lが発現するだけでは肝臓繊維化に至らないことを示した。従って、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。今後、肝細胞におけるNLRP1-P1214Lの発現とともに、どのような環境因子が肝臓繊維化を強く誘導するかを明らかにする予定である。

今後の研究の推進方策

肝細胞から放出されるNLRP3インフラマソームの粒子が膠細胞に取り込まれて肝臓線維化を誘導する可能性が報告された。同様の機序で、肝細胞におけるNLRP1インフラマソームの粒子が膠細胞を含む他の細胞に作用するかを解析する。また、NLRP1-P1214Lが肝細胞特異的に発現するマウスに肝臓の炎症を惹起する分子を投与して、肝臓の線維化が強く誘導されるかを調べる。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナ感染の拡大により、研究の制限される期間があった。また、年度内の実験に必要な物品の調達が遅延した。従って、予定していた実験(遺伝子改変マウスの解析など)に支障をきたした。次年度において、遺伝子改変マウスを使用する実験に必要な経費(マウス代など)や病態機序を解明するためのin vitro実験に必要な経費に研究費を使用する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] A Possible Association Between a Nucleotide-Binding Domain LRR-Containing Protein Family PYD-Containing Protein 1 Mutation and an Autoinflammatory Disease Involving Liver Cirrhosis.2021

    • 著者名/発表者名
      Yasudo H, Ando T, Maehara A, Ando T, Izawa K, Tanabe A, Kaitani A, Nomura S, Seki M, Yoshida K, Oda H, Okamoto Y, Wang H, Kamei A, Kojima M, Kimura M, Uchida K, Nakano N, Kaneko J, Ebihara N, Hasegawa K, Shimizu T, Takita J, Ogawa H, Okumura K, Ogawa S, Tamura N, Kitaura J.
    • 雑誌名

      Hepatology

      巻: 74 ページ: 2296~2299

    • DOI

      10.1002/hep.31818

    • 査読あり
  • [学会発表] NLRP1点変異が肝臓線維化を主徴とする自己炎症性疾患を誘導した症例2021

    • 著者名/発表者名
      安東泰希、前原明絵、安戸裕貴、安藤智暁、伊沢久未、田辺篤、貝谷綾子、亀井杏菜、王合興、金子順一、山路健、奥村康、小川誠司、田村直人、北浦次郎
    • 学会等名
      第49回日本臨床免疫学会総会
  • [学会発表] 肝臓線維化を主徴とする稀少疾患患者から同定されたNLRP1変異の機能解析2021

    • 著者名/発表者名
      安東泰希、前原明絵、安藤智暁、伊沢久未、北浦次郎、田村直人
    • 学会等名
      第118回日本内科学会
  • [学会発表] 肝臓線維化を主徴とする希少疾患患者から同定されたNLRP1変異の機能解析2021

    • 著者名/発表者名
      安東泰希、前原明絵、安戸裕貴、安藤智暁、伊沢久未、田辺篤、貝谷綾子、亀井杏菜、王合興、金子順一、山路健、奥村康、小川誠司、田村直人、北浦次郎
    • 学会等名
      第58回日本消化器免疫学会総会
  • [学会発表] A point mutation within the function-to-find domain (FIIND) of human NLRP1 causes an autoinflammatory disease involving liver fibrosis and dyskeratosis.2021

    • 著者名/発表者名
      Akie Maehara, Taiki Ando, Kumi Izawa, Tomoaki Ando, Ayako Kaitani, Anna Kamei, Hexing Wang, Koji Tokushige, Nobuhiro Nakano, Naoto Tamura, Ko Okumura, Jiro Kitaura
    • 学会等名
      第50回日本免疫学会学術集会
  • [学会発表] ヒトNLRP1のFIINDにおける点変異(P1214L)は自己炎症性疾患を誘導する2021

    • 著者名/発表者名
      前原明絵、安東泰希、安戸裕貴、伊沢久未、安藤智暁、貝谷綾子、田村直人、北浦次郎
    • 学会等名
      第5回日本免疫不全・自己炎症学会 総会・学術集会
  • [学会発表] 肝硬変を伴う希少疾患患者から同定されたNLRP1点変異の機能解明2021

    • 著者名/発表者名
      前原明絵、安東泰希、安戸裕貴、伊沢久未、安藤智暁、貝谷綾子、奥村康、小川誠司、田村直人、北浦次郎
    • 学会等名
      第30回東京免疫フォーラム

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公開日: 2022-12-28  

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