我々は小腸腫瘍のintravital microscopy及びIEL-腸管腫瘍由来オルガノイドの共培養システムを世界で初めて開発し、腫瘍ニッチにおけるT細胞動態およびIEL-腫瘍細胞間相互作用の可視化と腫瘍免疫におけるその意義を検討した。結果としてIELによる抗腫瘍活性はCD103及び細胞接触依存的である事を証明した。また、これまでに機能が不明であっ たIEL特異的に発現するCD8ααがIELの高い運動能と上皮細胞間への配置に重要な役割を有することを示した。今回我々はこれらの研究を発展させ、CD103/E-cadherinを介したIEL-上皮細胞間接触及びCD8αα/TLシグナルを介したIEL-上皮細胞間配置を標的とした新規の腫瘍治療法の可能性の検討を行う方針とした。 CD8αα/TLシグナルの抗腫瘍免疫における重要性を検討する目的でDPE-GFPマウスに複数のクローンで抗CD8α抗体を投与したところIELの配置に変化はなく、少なくとも今回使用したクローンの中和抗体ではIEL-上皮細胞間接触を阻害できないことが分かった。 CD103/E-cadherinシグナルを増強させる抗腫瘍免疫療法の有用性を検討する目的で、E-cadherinの発現を上昇させると考えられているNSAIDsであるセレコキシブをCD103-/- x APCminマウスおよびCD103+/- x APCminマウスに投与した。コントロールマウスでは腫瘍の減少が確認されたがCD103-/- x APCminマウスでも腫瘍の減少傾向が見られ、抗腫瘍効果は完全にはキャンセルされなかった。IEL-上皮細胞間接触を特異的に増強/阻害する実験系は特にin vivoでは困難であった。今後はIEL-オルガノイド培養系を主軸に、EMT阻害剤など、より特異性の高い薬剤のスクリーニングを検討する。
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