ACVRL1は遺伝性出血性末梢血管拡張症の責任遺伝子として知られている。ACVRL1遺伝子変異によるアミノ酸置換は特定のドメインではなく受容体構造全体に幅広く存在するが、変異の違いと受容体機能・血管病態との関係は不明である。また、遺伝性出血性末梢血管拡張症には後天的要因も深く関わるとされているが、血管形成の異常メカニズムや発症時期・重症度への関与は不明である。本研究では、遺伝性出血性末梢血管拡張症の病態多様性メカニズムの理解に向けて、遺伝子変異と受容体機能の関連解析、遺伝子変異と血管形成異常の関連解析、後天的要因のシグナル伝達への影響の解析から、病態多様性の機序を明らかにすることを目的としている。 前年度は、複数のACVRL1変異体の機能解析から、多くの変異体では活性が異常となっていることを見出した。しかし、野生型と同様な挙動を示す変異も存在しており、これまで考えられていたようなシグナル伝達系の低下だけでは説明出来ない機能低下・発症メカニズムの存在も示唆された。ACVRL1はSMAD経路だけではなく、MAPKやPI3K/Akt経路など複数のSMAD非依存経路を活性化することが知られている。そこで本年度は、患者変異がSMAD非依存経路に対してどのような影響を及ぼすのか解析を試みた。その結果、野生型ACVRL1ではBMP9に依存して複数のMAPK経路が活性化したのに対して、ACVRL1変異体では活性が低下することがわかった。さらに、活性が低下する経路は変異体によって異なることがわかった。
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