バソプレシン(AVP)は抗利尿ホルモンとしてだけでなく、概日リズムや社会性、不安、認知、記憶、行動など様々な影響を与えていることが分かっているが、その神経核ごとの投射については明らかにされていない。本研究ではAVPニューロン特異的にCreを発現するAVP-CreマウスにCre依存性に蛍光タンパクを発現するアデノ随伴ウイルスを注入することで、神経核特異的にAVPニューロンを標識し、それぞれの神経核に存在するAVPニューロンごとにその投射先を明らかにすることを目的としている。 本研究ではAVPニューロン特異的にVenusタンパクを発現するAVP-Venusマウスを用いることで、AVPニューロンの細胞体が存在する神経核の確認を行い、嗅球、ブローカーの対角帯核、外側中隔核、分界条床核、室傍核、視索上核、正中隆起、内側結節核、偏桃体内側核、中脳水道周囲灰白質、脳室周囲にVenus発現を認めた。さらにAVP-Creマウスに投与するにあたって、Cre依存性に蛍光タンパクを発現する適切なアデノ随伴ウイルスの検証を行い、本研究に適切なアデノ随伴ウイルスを見出し、AVP-Venusマウスを用いて見出した神経核に、検証したアデノ随伴ウイルスを投与することで、各神経核におけるAVPニューロンの投射先を明らかにしようとしたが、本研究で用いたAVP-CreマウスにおけるCreの発現が、AVPニューロンではない神経細胞にも発現していることが判明したために、現在保持しているAVP-Creマウスでは正確な評価ができなかった。そのために正確な評価のためにtransgenicではなく、今後はknock-inマウスを用いた実験を検討している。
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