研究課題/領域番号 |
21K20932
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤井 健太郎 大阪大学, 医学系研究科, 助教(常勤) (90908328)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 血球貪食症候群 |
研究実績の概要 |
血球貧食症候群は、骨髄などの網内系組織において炎症性サイトカインにより活性化されたマクロファージが増殖、自己の血球を貧食し、血球減少を引き起こす致命的な疾患である。背景にある炎症性サイトカインの過剰産生をターゲットとした強力な免疫抑制療法に加えて、化学療法もしばしば併用されるが、血球貪食の実態については不明な点が多い。
最初に研究課題として、疾患特異的マクロファージによる血球貪食機構が、どのようなメカニズムによって起きているか解明することを挙げた。特に、生きた細胞を貪食するとされる現象を評価し、血球のアポトーシス非依存性であることを証明することを研究の主たる目的とした。この解析には時空間的解析が必要と考え、最初に肝臓・脾臓・骨髄などの網内系マクロファージをイントラバイタルイメージングで観察した。細胞密度や血管走行の点から、肝臓で観察をすることが適していると考えた。 初年度は、薬剤によりアポトーシスを誘導した血球を養子移植する系を確立し、この系を用いて、肝臓内のマクロファージが血球細胞を貪食する様子をイントラバイタルイメージングを用いて撮影することに成功した。 引き続き、疾患モデルマウスを利用し、疾患特異的マクロファージが血球を貪食する様子を観察し、貪食される血球のアポトーシスするタイミングを詳細に観察し、疾患モデルマウスで貪食される血球の貪食される瞬間の生死の状態を評価し得た。 並行して、疾患特異的な血球貪食マクロファージをFACSで単離することに成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的の1つとして、疾患特異的マクロファージの貪食がアポトーシス依存性かどうかを評価することを挙げていたが、イントラバイタルイメージング系を利用し観察することにより評価することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き研究課題としては大きく2つある。 まずは、この疾患特異的な現象のメカニズムを解明をする必要がある。具体的にはどのようにして、このマクロファージが血球を貪食するようになるかのメカニズムの解明を目指す。 また、この疾患特異的マクロファージが疾患にどのように関わっているのかを評価する必要がある。 現在、この疾患マクロファージをFACSで単離することに成功しており、遺伝子解析をすすめることで、これらの課題を解決する方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は、血球貪食症候群における血球貪食マクロファージの貪食機構の解析と疾患特異的マクロファージの全身炎症への寄与の解明を主たる目的としている。 血球貪食マクロファージの貪食機構の解析には、貪食される細胞の生死を時空間的に解析することが必要であり、二光子励起顕微鏡を用いたイントラバイタルイメージングが有用である。初年度は、この解析に従事した。二光子励起顕微鏡は所属研究室で購入したものを使用し、研究に使用したレポーターマウスも研究室で飼育しているものを使用したため、研究費を節約することが可能であった。 一方で、本研究のもう一つの柱である、疾患特異的マクロファージの全身炎症への寄与の解明には、次世代シーケンサーを利用した大規模なトランスクリプトーム解析が必須であり、可能であればシングルセルレベルでの詳細な解析が望ましい。大規模なトランスクリプトーム解析は、外部委託での解析に頼っており、費用も非常に高額である。次年度、以降には多数のサンプルでのシングルセルレベルでのRNAシーケンスを予定しており、その費用を繰り越した本研究費にて補う予定である。
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