研究課題/領域番号 |
21K20933
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
蟹江 慶太郎 神戸大学, 医学部附属病院, 医員 (90905829)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | iPS細胞 / 下垂体機能低下症 / 自己免疫性下垂体疾患 / 抗原特異的キラーT細胞 / 抗PIT-1下垂体炎 / 自己免疫性下垂体炎 |
研究実績の概要 |
下垂体機能低下症をきたす自己免疫性下垂体疾患は、自己免疫機序が推定されているがその本態は明らかではない。自己免疫性下垂体疾患の一つである自己免疫性下垂体炎は、その発症に特異的なキラーT細胞の関与が示唆されているが、特異的抗原の同定が困難であり、患者固有のHLAを持つヒト下垂体を用いた疾患モデルが必要であることから解析が困難である。自己免疫性下垂体炎の患者由来iPS細胞を利用した疾患モデルを作成し、細胞性免疫あるいは液性免疫の細胞傷害への関与を明らかにし、自己免疫性下垂体疾患の発症メカニズムを解明することを本研究の目的とする。 本研究では、申請者らがこれまで病態を明らかにしてきた自己免疫性下垂体疾患である抗PIT-1下垂体炎のin vitro疾患モデルを樹立し、その病態解析を行う。①患者iPS細胞から下垂体の作成、②患者由来PIT-1特異的キラーT細胞の単離及び、下垂体との共培養を用いたin vitro疾患モデル作成、③下垂体と患者血清、末梢血液単核球細胞 (PBMC)を用いた補体依存性細胞傷害(CDC)活性、抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性の評価の3ステップで実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①患者iPS細胞から下垂体の作成:既に稼働しているヒトiPS細胞からの下垂体分化手法を用いて、患者iPS細胞由来下垂体(iPSC下垂体)を作成した。健常対照として201B7株、409B2株等の複数株を用いた。それぞれにおいて標的細胞となるPIT-1陽性細胞の産生を確立し、ホルモン産生能も確認した。また、PIT-1発現を追跡するためのPIT-1-GFPレポーターiPS細胞も作成が完了した。 ②患者由来PIT-1特異的キラーT細胞の単離およびiPSC下垂体との共培養を用いたin vitro疾患モデル作成:患者PBMCに対し、全長PIT-1タンパクをカバーする10アミノ酸毎のオーバーラップペプチドを作成し、個別に添加して活性化するキラーT細胞を分取しクローン化することに成功した。そのことによりキラーT細胞の特異的活性化に関連するペプチドおよびT細胞受容体(TCR)を同定し、その特異的T細胞の活性化(CD137発現)、細胞傷害性(CD107a発現)を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
in vitro疾患モデル作成(②の後半):患者iPSC下垂体と抗原特異的キラーT細胞の共培養によるin vitro疾患モデルを用いて、フローサイトメトリー、qRT-PCRによるキラーT細胞の特異的細胞傷害性、免疫染色法によるiPSC下垂体における特異的アポトーシスおよびキラーT細胞浸潤を評価する。また、共培養サンプルを用いたRNA-seq解析により本疾患の治療候補の探索を行う。 ③下垂体と患者血清、PBMCを用いたCDC活性、ADCC活性の評価:iPSC下垂体に対して、患者PBMCおよび患者血清の添加によるADCC活性をフローサイトメトリーによる、PIT-1陽性細胞あたりのアポトーシス細胞率により評価する。またiPSC下垂体に対する患者血清の添加によるCDC活性の評価を同アッセイにより行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の消耗品の使用量節減により、次年度使用額が生じた。翌年度分として請求した助成金と併せて、以下記載のごとく申請時と同様に使用する。 【消耗品費】各項目は全体の研究費の90%を超えていない。ヒトiPS細胞の未分化状態の維持培養、およびヒトiPS細胞由来下垂体への分化誘導において、上記試薬等を用いた成長因子非含有培地、低分子化合物が必要である。また部位特異的遺伝子ノックインを行ったレポーターiPS細胞のゲノタイピング関連試薬が必要である。iPS細胞由来下垂体とキラーT細胞を用いて共培養実験を行い、フローサイトメトリーによるキラーT細胞の特異的活性化、リアルタイムPCR法によるキラーT細胞の特異的細胞傷害性、および免疫染色法による患者iPS細胞由来下垂体特異的アポトーシス、下垂体へのキラーT細胞浸潤の評価を行うため、各アッセイにおける試薬が必要である。尚、各消耗品の金額は現在の市場価格に基づき算出した。【その他】論文作成および研究成果投稿のための英文校正費用および研究成果投稿料が必要である。2022年度の第95回日本内分泌学会学術総会および第21回日本再生医療学会総会にて申請研究の成果を発表予定であり、その参加費が必要である。金額は市場価格を参考に算出した。
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