研究課題
小児急性骨髄性白血病(AML)においてはこれまでに種々の分子生物学的異常が同定され、予後との関連が明らかになったことで層別化治療が進み、長期生存率が向上している。一方、既知の予後因子を有さず中間リスク群と扱われる症例の一部は再発難治の経過をたどり、より詳細な予後因子の解明が求められている。本研究では小児急性骨髄性白血病(AML)の予後不良因子であるmonosomy 7に着目し、7番染色体上のいずれかの遺伝子異常が小児AMLにおいて重要な予後因子となる可能性を考え、それらの臨床的意義を明らかにすることを目的とした。日本小児白血病リンパ腫研究グループAML-05研究に登録された330例に対し、これまでに造血器腫瘍や骨髄増殖性疾患、固形腫瘍で病因と関連があると報告されている343の遺伝子を対象にパネルシーケンスを施行した。7番染色体上の遺伝子変異としてKMT2C、EZH2、BRAF、CUX1、SAMD9、SAMD9L変異を31例に同定し、また、コピー数解析よりMonosomy 7を7例、del(7q)を8例に同定した。Monosomy 7は全例が非寛解で7例中4例が死亡と予後不良である一方で、del(7q)は様々なリスク分類の症例が混在し再発や非寛解は多いものの死亡は8例中2例で、Monosomy 7と比較し予後良好であった。またKMT2C変異を有する症例も再発や非寛解、死亡が多く認められた。Monosomy 7とdel(7q)は同じ7番染色体遺伝子の欠失であるが分子生物学的背景や予後が異なること、KMT2C変異は小児AMLにおける重要な予後因子である可能性が示唆され、今後さらに詳細な検証を進めていく。
2: おおむね順調に進展している
予定していたJPLSG AML-05試験登録症例330例に対して343遺伝子を対象としたパネルシーケンスを実施することができた。コピー数解析よりMonosomy 7,del(7q)の同定ができ、7番染色体上の遺伝子変異を有する症例を抽出することができた。また、7番染色体上の遺伝子以外についても多くの遺伝子異常が同定できている。得られた結果の一部については昨年度学会報告ができており、研究進捗状況としては概ね順調に進んでいると思われる。
パネルシーケンスの結果からMonosomy 7、del(7q)、7番染色体上の遺伝子異常を有する症例についての抽出ができた。特にMonosomy 7とdel(7q)は同じ7番染色体上の欠失を含むものの臨床学的特徴や分子生物学的背景が異なることが示唆され、今後詳細な検証を進めていく7番染色体上の遺伝子異常としてはKMT2C変異が予後因子である可能性が示唆され、これについても他の分子生物学的背景との関連等について検証を行い、論文報告に向け準備を進めていく。
前年度でAML-05登録症例330例に対するパネルシーケンスを実施し、小児AMLにおいて注目すべき7番染色体上の遺伝子異常が複数検出された。検出された遺伝子異常についてはサンガーシーケンスによるvalidation等を予定していたが、現在その中でも特に注目すべき遺伝子を抽出している段階であり、まだ実施できていないため、次年度の繰り越しとなった。今後validationを行い、他のコホートでの再現性の確認のため、AML-05研究以外のサンプルを用いたサンガーシーケンス、ターゲットシークエンスによる解析を進めていきたいと考えている。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件)
Haematologica
巻: 107 ページ: 583~592
10.3324/haematol.2020.269431
Blood Advances
巻: - ページ: -
10.1182/bloodadvances.2021005381
British Journal of Haematology
巻: 194 ページ: 414~422
10.1111/bjh.17569
International Journal of Hematology
巻: 113 ページ: 662~667
10.1007/s12185-020-03066-7