研究課題/領域番号 |
21K20939
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
潮田 亮平 旭川医科大学, 大学病院, 助教 (50910270)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 心筋細胞分裂 / 心臓再生 / エピジェネティクス / ヒストン修飾 / 転写因子 |
研究実績の概要 |
進行した心不全の治療は困難で心臓機能の低下は不可逆的である。ヒトは失った心筋組織を再生する能力がないことがその原因と考えられている。ヒトを含め哺乳動物では出生後まもなく心筋細胞は分裂しなくなるが、心筋細胞を分裂させることができれば心臓を再生することが可能になると考えられるため、心筋細胞の分裂を制御するメカニズムの解明が求められている。我々はこれまでに、ヒストン修飾H3K9me3が心筋細胞の分裂制御において重要な役割を果たしていることを明らかにした。本研究では、H3K9me3が心筋細胞の分裂を制御するメカニズムを解明し、心臓の再生治療へ応用することを目的とする。 心筋細胞においてH3K9me3が制御する遺伝子を同定するために、H3K9me3を消去したときに変動する遺伝子をRNA-seqを用いて網羅的に解析し、標的遺伝子を複数明らかにしている。これらの遺伝子が心筋細胞の分裂制御に直接関わるかどうか検討するために、これら遺伝子を強制的に発現または抑制するベクターを作成し、マウスモデルを用いて機能解析を開始した。これまでに、ベクターの投与後1-2週間で、細胞周期の活性化をしめす遺伝子がいくつか見つかっている。今後、これらの遺伝子が心筋細胞の分裂を促進し、心臓の再生を誘導できるかどうか検討を進める。 発現変動を示す遺伝子に加え、H3K9me3の消去により転写が活性化する非遺伝子領域も明らかとした。これらの領域は、近傍遺伝子の発現制御に関わっている可能性があるため、遺伝子発現制御における非遺伝子領域の転写活性化の関与についても検討を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題採択後の半年間で、計画していたベクターを作成し機能評価を開始できたため。
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今後の研究の推進方策 |
作成したベクターを用いて、標的遺伝子の心筋細胞分裂に与える影響について機能評価を進める。また、心筋細胞に対し細胞周期の活性化を示した遺伝子においては、その作用メカニズムの検討を行うとともに、心臓障害モデルを用いて心臓の保護作用または再生に寄与するかどうか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
技術的な問題で作成が不可能なベクターが複数あり研究対象とする遺伝子を絞った。これら遺伝子機能の解析に用いるため、費用を繰り越すことにした。
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