本研究では、通常の屈筋腱損傷で誘導されるScleraxis陽性細胞を腱由来線維芽細胞と定義し、それが治癒過程にどの程度関与するかを明らかにした。通常の治癒過程では、腱外から侵入する線維芽細胞により瘢痕組織となるが、腱の中心部ではScx陽性細胞が観察された。一方、腱をハイドロゲルで被覆した場合、瘢痕組織が形成されることなく、主に腱周囲組織からScx陽性細胞が増殖し治癒を促すことが分かった。このことから、腱の治癒過程では通常、腱外からくる線維芽細胞が治癒の中心的な役割を果たすが、その侵入を抑えると、Scx陽性細胞が腱周辺組織より増殖し、治癒を促すことが明らかとなった。
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