研究実績の概要 |
心筋炎の病態には心筋の酸化ストレスやミトコンドリア機能異常が深く関わっており、それらを生体イメージングで可視化できれば、非侵襲的な診断が可能となる。本研究ではドキソルビシンを投与した薬剤性心筋炎モデルマウスにおける生体内レドックス状態を、3-carbamoyl-PROXYL(CmP)を分子イメージングプローブを用いて磁気共鳴代謝イメージング装置(in vivo DNP-MRI)で評価した。Carbamoyl-PROXYL (CmP)をプローブとしてマウスへ静脈投与後にDNP-MRIによる撮像を行うと、DNPによる核偏極の増大により通常のMRIに比べて最大10,000倍に高感度化されるため、従来見ることのできなかった微小なシグナル変化を可視化することが可能である。生体内でのCmPのラジカルの酸化還元反応によってMRI信号が消失する速度から、生体内でのレドックス反応を定量化、及び画像強度として可視化することができる。マウスの全身状態が悪化する以前の早い段階から有意差が見られたことから、in vivo DNP-MRIは心筋炎の早期診断に有用であることが示唆された。さらにin vitroの評価によって、心筋でのCmPの代謝は主にミトコンドリア機能を反映していることが示唆された。 心筋炎では無症状から循環不全に至る劇症型まで幅広い病像を来すが、心不全症状が現れるまでの早期診断は困難である。本研究で示された磁気共鳴代謝イメージング装置を用いたミトコンドリア機能の可視化による早期診断の可能性を発展していくことで、今後臨床応用につながっていく可能性があると考える。
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