研究課題/領域番号 |
21K20961
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
向井 務晃 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任助教 (40907698)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | PRP / 末梢神経障害 / 神経障害性疼痛 |
研究実績の概要 |
2021年度は下記4点について検討した。 ・最初に、末梢神経障害除圧モデルの作成を行った。従来の末梢神経の疼痛に関する動物実験では、鑷子や糸による末梢神経絞扼モデルが採用されてきた。神経保護に働く薬剤の投与実験は、上記神経障害と同時に行われることが多く、神経障害による強い炎症と薬剤による神経保護効果が同時に起きるため、神経障害後の修復過程を評価することが困難であった。そのため、神経をナイロン糸で絞扼する、chronic constriction injury(CCI) modelを作成後、von Frey testによる疼痛閾値を指標に、神経周囲を剥離し、糸を除去する日数の検討を行った。その結果、術後3日が適当であった。術後1日で上記処置を行った場合は、疼痛閾値の回復が早過ぎ、また術後5日の場合、絞扼した糸周囲の癒着が強く処置が困難であった。 ・CCI model作成後、術後3日目(=神経除圧術日)、7日目で神経検体を摘出し、定量PCRにて術後の炎症マーカーの推移を検討し、術後3日目での上昇と、7日目での一部のマーカーの減少を確認した。 ・上記検討とともに、本研究のpositive controlとして、platelet rich plasma(PRP)をCaCl2を用いて活性化させてゲル状にしたPRP gelを、CCIモデルで評価した。投与後7,14日目に神経検体を摘出し、神経内での炎症マーカー発現の推移を検討した。結果、PRP gelの投与により、神経内でのTNFa、IL-6 mRNAの発現が有意に抑制された。 ・上記PRP gel投与後、病理評価にて有髄神経線維数、密度、径、ミエリン鞘の厚さに有意差が生じるか検討した。結果、有髄神経線維数、密度について、PRP投与群で有意に高値であり、P R Pによる神経保護効果が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
4月に研究者本人の異動による実験系の立ち上げに時間を要した。また7月に新医学部棟への研究室の引越しにより、一旦実験を完全に中断、実験環境整備に時間を要した。 さらにcollagen sheetにiPS細胞由来巨核球/血小板製剤を浸透させ、障害した末梢神経に投与する予定だったが、sheetの製造規格が変更になり、適度な厚み、強度のsheetの入手が困難になったため、上記製剤のcarrierを新たに選定する必要があった。
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今後の研究の推進方策 |
新研究室の稼働状況は現在良好であり、研究を遂行中である。 来年度について、今年度PRPを用いて確立した、ラット末梢神経除圧モデルを用いて、iPS細胞由来巨核球/血小板製剤の有効性の検証を行う。またin vitroではヒトiPS細胞からNeural crestを介した、Schuwann細胞への分化系の確立と、これを用いたiPS細胞由来巨核球/血小板製剤のSchuwann細胞への効果を検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
まず当該助成金が発生した原因として、4月に研究者本人の異動による実験系の再度の立ち上げに時間を要したこと、また7月に新医学部棟への引越し作業により研究の進行が遅れたことが挙げられる。 新研究室の稼働状況は現在良好であり、研究を遂行中である。使用計画として、来年度はラットへのiPS細胞由来巨核球/血小板製剤の投与実験に加え、in vitroでのiPS細胞からNeural crestを介した、Schuwann細胞への分化系の確立と、これを用いたiPS細胞由来血小板製剤のSchuwann細胞への効果を検証する予定である。 特に後者は新規の実験系の確立のため、多額の費用を要し、前年度からの繰り越し分を使用する予定である。
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