緑内障患者において他覚的視野検査結果と自覚的視野の相関を調べる研究を当初計画していたが、filling defect現象と単純な視野欠損(霞むような見え方の変化)とを区別して自覚的視野を(他覚的に定量可能な形式で)評価すればよいのかの検討で行き詰ったため、大きな進捗が得られずに経過した。本大学内に、視覚心理学を専門とする研究室が複数存在するため、共同研究することも含めて検討している。緑内障は現状失明原因の第一であり、無自覚に症状が進行するのみならず、点眼薬による治療を開始しても約半数が1年以内に脱落するとの報告もあり、長い期間の治療を不可欠とする緑内障病態を考えれば、①早期発見 ②治療/通院継続 ③進行が予測される症例へのより低侵襲かつ効果的な手術治療の開発 という3つが肝要と本研究者は考えるが、この研究で試みていたものは特に②と③に資するものであった。つまり、疾患理解促進により②が達成され、そして③へ至った際にも、患者および家族へなぜ手術加療が必要なのかを、より理解しやすい形で説明できることができれば、それなりの頻度で遭遇する「手術は必要だが踏み切れずに徒然に時間が経過する」という事態も回避しやすくなるからである。現在、この目標はそのままに、緑内障通院継続に資するアプリケーションを開発している最中であり、この点では当初の研究の背景・目的からは逸脱せずに研究継続することができていると考える。
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