腎癌のバイオマーカーとして臨床応用されたものはない。腎癌の新規診断マーカー確立を目的として、後向研究を行った。探索コホートとして、腎癌患者88人と健常者10名を登録し、様々なサンプルから細胞外小胞を回収し、16S rRNAメタゲノム解析を実施した。尿サンプルは健常者でも細菌尿の影響等があり、診断に有効な細菌DNAを同定できなかったため、バイオマスの小さい血液に注目したところ、健常者に対して腎癌患者の血清細胞外小胞に豊富な細菌DNAを3種類同定した。これらを組み合わせて腎癌の診断を目的とした指標を作成したところ、AUCは0.88、感度と特異度はそれぞれ89%、40%であった。 検証コホートとして腎癌患者32名と健常者16名を登録し、同様の手法で血清細胞外小胞に含まれる細菌DNAの解析を行ったところ、作成した診断指標のAUCは0.63、感度と特異度はそれぞれ90%、38%であった。さらに他の癌腫における有効性を調べるため、膀胱癌患者50名と健常者20名でも検証したところAUCは0.52であり、腎癌以外では有用ではなかった。 以上より、血清細胞外小胞に含まれる細菌DNAは検証コホートにおいても腎癌患者に対して高感度を示し、スクリーニング検査としての有用性が示唆された。また、血液内細菌情報を用いた診断指標は早期腎癌(病理学的T分類 Stage T1)においても使用可能であり、腫瘍量に依存しない診断マーカーとして期待される。
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